冬の間しまいこんでいた扇風機を出してきて、蒸し暑く感じる日に短時間つけたりつけなかったりするくらいの季節である。
「ちょっとだけつけておくか」
なんて言って、部屋の隅、壁コンセントのあたりに扇風機を置いたまま電源を入れる。
真後ろから風があたる位置関係。
「お、これはいかん。肩首が冷えてきている」
と思ったものの、そのまま過集中気味でパソコンに向かい続け、数時間同じ姿勢で座っていた。
こんなに冷えてはさすがに肩が凝ったなあ、なんてコキコキやりながら、まあ寝れば直るであろうと布団に入る。
いつものように猫が枕の上に来るので、飼い主の方は枕から半落ちの姿勢でテトリス状に固まって仲良く寝た。
果たして朝起きると、首が扇風機よりはるかに可動域の狭い上下左右45度くらいしか動かない。
「え、扇風機の風くらいでっ?扇風機の風程度でこんなに筋肉固まるの?やだ40代怖いっ」
昨日今日40代になったかのように新鮮におののくのはいいが、何をするにもまったく不便なことである。
危なかっしくて自転車にも乗れないではないか。
責任の一旦を担っているはずの猫は、今日も快適に背後から私を呼ぶ。
「そっち振り向けないから、後ろで鳴かないで」
たしなめるのに、仕方なくって身体ごと振り返ると、遊んでもらえると思った猫は尻尾をピンと立てて嬉しげに走っていった。
自分の背中に舌が届く彼女に、この痛みは決して伝わらないのであるか。