晴天の霹靂

びっくりしました

小鳥のマグを買う理由

そろそろ卵を買っておこうと思ってスーパーへいくと思っていたより40円ほども値段が高い。

うーむ、いつの間にこんな値段になったものか?

と、しばし立ち尽くしていると、すぐとなりで女性の声がする。

「卵高くなったねえ」

 

行きがかり上、ほぼ無意識にコクンとうなずいてから我にかえる。

当然ながら、それは連れの中学生くらいの娘さんに向かって言ったのであって、いきなり見知らぬ私に向かって放たれた言葉ではないのだ。

別に放っておけばそれほど目立つ動作でもなかったろうが、やや恥ずかしく思った私はうなずいた首の動作を「顔にかかって邪魔な前髪を振り払う仕草」に移行してごまかしてみようという気になり、なんとなく顔を傾けつつ頭を軽くふった。

振りながら、エアリーさに欠ける髪の感触でもうひとつ大切なことを思い出した。

今日は日差しよけでベレー帽を被ってきている。

前髪が顔にかかるわけもないし、帽子が飛んでいくほどアグレッシブに首を振りでもしない限りヘアスタイルは動かない。

このへんで誰もみてない小芝居もやめておけばよかったのだけど、やりかけた手前バツが悪く、「肩凝ったなあ」という風に首を軽く左右に振って内なるオーディエンスを納得させた。

もはや卵売り場の前で文鳥のマネをしてる人みたいである。

 

卵のことは諦め、気を取り直して雑貨屋に寄って前からちょっと気になっていた鳥の模様のマグカップを買ってかえる。

目を見開いて、首を左右にコキコキ振って、小鳥は可愛い。

何の問題もない。