晴天の霹靂

びっくりしました

人生は魚の苦いとこ、唇はいちじくの暗いとこ

知る人ぞ知る、知らない人ぞまるきり知らない話をします。

 

KATEという化粧品メーカーの「リップモンスター」という口紅が大変に人気があるそうな。

もともとドラッグストアなんかで売られている安い価格帯の商品であるにも関わらず、ネットでは倍近い値段がついたりもすると聞くに及んで、「そんなことがあるのかねえ」と思っていた。

買い物ついでに好奇心を出してKATEのコーナーを覗きに行ってみるとなるほど、どの店も見事にケースが空という珍風景。

普通ならば、「そうは言ってもローカルチェーンのドラッグストアにはそこそこ普通に並んでる」くらいの状況になりそうなものだが、と感心したもんです。

 

さて、やっと編み上げた新しいストールをひらひらさせて猫砂を買いにでかけたご機嫌な昼下がり、

いつものドラッグストアにて、不自然な空白のある化粧品売り場の一角に赤い小箱がひとつポツンと置かれている様子がふっと視界に入る。

「おや、これは」

と見に行くとまさに、それこそかの「リップモンスター」だったのです。

 

「へー、なぜここに一本だけあるんだろうか」

と足を止めてじっと観察。

なるほど資本主義とはこういう意識によってドライブしていくんだなと我ながら呆れることに、二度と見かけることはないのかもしれないという想いに押されてついその一本を買ってしまったのでありました。

 

うっかり買ってしまったことに驚きつつ、猫砂と口紅を抱えて歩く帰り道。

よく考えてみれば口紅につける名前が「リップモンスター」ってすごいな、と考えているとだんだんおもしろくもなってくるのです。

「唇お化け」って普通に考えてほぼ悪口だよな。

一体どうしてそんなに人気があるのかね。

ろくに見もせずに買ってきた赤い小箱をよく見たらなかなか可愛らしいことが書いてある。

05番とナンバリングされた我が口紅の、色の名前が「ダークフィグ」

44歳の唇を見て「いちじくの暗いとこみたいですね」っていきなり言ったら、だいたいのところは遠回しな悪口ではあるまいか。

かき氷を食べすぎてチアノーゼをおこしがちな我が人生を顧みて、なかなか愉快な思いをする。

積極的にミーハーであることはやや恥ずかしいが、正直ちょっと気分の良い買い物だった。

 

 

 

近所の猫砂の安いドラッグストアにて1540円なり。