今更ですが、アマプラで『イコライザー』を見ました。
2014年ですね。
トレイラーのクロエ・モレッツのインパクトが強すぎて、すっかり見た気になっていました。
このトレイラーを数回見たら自動的に「あー、はいはい。あのデンゼル・ワシントンが娼婦のクロエ・モレッツを助ける映画ね。見た見た」っていう気分になってきてしまうもんです。
でも本編見たら思ったほどクロエ・モレッツが出てこなくてびっくりしたので、やっぱり初見だったらしいのでありました。
いくら動ける役者とはいえ、デンゼル・ワシントンも還暦。
全体的に顔芸を多用しているおかげで、いたずらにカメラ振り回したりカット割ったりする場面が少ないところが、動体視力のおぼつかない私には非常にすばらしい絵作りでした。
「あれ、そこは走ったほうがいいんじゃないの?」
っていうシーンまで意外とのしのし歩いている感じとか、中年が見るには渋くていいもんですね。
実際、ベテランの大人って、うっかり走ると2日後に捻挫してたりするからさ(実話)
潔癖症で穏やかで正義感の強い謎の男というキャラでずーっと描写していく一方、勤務先のホームセンターの工具を持ち出してチンピラを撲殺後、軽く血を拭いただけでそのまま売り場に戻すなど、カタギと思えぬ暴挙はむしろ気軽にやるところが、じわじわとユーモラスです。
誰かが知らずに定価で買うのか、そのルミノール反応の出るハンマー。
チームでホームセンターに乗り込んできたロシアン・マフィアが、異様に独創的な手法で一人ずつ退治されるラストのシーンも怖いんですが、ちょっと変。
最後に追い詰められたボスが殺されかけつつ
「お前誰なんだーっ」
と叫ぶに至っては、申し訳ないけど笑えます。
本当に誰なんだ、あの真面目な顔しておかしなことばかり考えてる殺し屋のおじさん。
自分より明らかに強くて、無駄にオリジナリティを追求する奇癖のある、身元不明の人が殺しに来る瞬間って、本当にああいうこと叫ぶのかもしれないですね。
もう諦めるから、せめてお前誰なのか知りたいぞ、と。
デンゼル・ワシントンの「静かさ」と「イッちゃってる感」がずーっと並行して映ってる感じが面白い映画だと思うのだけど、小道具として印象的なのが、やっぱり本です。
本が映っている映画って、3割増し面白く見える法則があるもんですが、この映画の「眠れなくて夜ごとダイナーで本を読む」というのもかっこいい。
それほど面白くて読んでるのでもないのでしょうが、手に取る本はその時々の自己紹介にもなっていて、あんまり押し付けがましくない方法で周囲に自分のことを伝えています。
一方私といえば、最近では本を読むときはほとんどが電子書籍。
タイトルを見て「もう魚は釣れた?」なんてふいに話しかけられるような粋な物語は始りようもなく、なにより電子書籍というのはどういうわけか「質より量」といった感じでガツガツと読みがちになることにも気づきます。
量が質を担保する読書っていうのも間違いなくあるとは思うのだけど、生活の空白を埋めるみたいに、読んでるような読んでないようなどこか瞑想的な読書というのも、思えば読む楽しみの一つではなかったか。
そんな不眠症のデンゼル・ワシントンを見たせいってわけでもないですが、近頃、だいぶ昔習った外国語の原書を手に入れて、辞書を引き引き、毎日半ページくらいずつ読んでいます。
久しぶりに紙の本を大事に読む感覚とか、硬いピスタチオをやっと割るみたいに文章を噛み砕く感じとか、これはこれ、間違いなく豊かな時間だなあ、などと思い出す気がするのです。
……で、結局あの人誰なの?