晴天の霹靂

びっくりしました

『DUNE/砂の惑星』 ~色々ハラハラしたけど私は楽しかった

『DUNE/砂の惑星』を見てきました。

私はすごく楽しんで見てたんだけど、冷静に考えるといろいろ心配。


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この公開に合わせて原作(文庫で3分冊)を読むやら、前作のデビット・リンチ版『DUNE』(駄作の呼び声高し)を読むやら、『ホドロフスキーのDUNE』を見るやら、だいぶ予習して行ったのです。

その私でギリギリ、劇中の誰と誰の関係性がどうなっているのかやっとついていける程度だったくらい、とにかくこの映画一本で説明しなければならないことが多いのです。

何も知らずに劇場に行ったら、たぶんキョトンとしてるうちに終わる。

しかも見終わってびっくりしたことには、

「さあ貴種が流離したきた、ここからやっと英雄譚が始まるよ!」

というところで終わるではないですか。

パンフレットを買ってやっと二部作品として企画されていたことを知る始末です。

言ってよ先に、始まる前に終わったからびっくりしたじゃないの。

 

何が心配って、二部作というからには、この一作目の興行収入が全然ダメだったらそのまま「なかったこと」になる可能性もゼロじゃないことです。

冷静に振り返って、原作を読んでない人が急に見に行って「おもしろかった!次も楽しみ!」となるには、説明過多のうえにねじれたりよじれたり裏返ったりが多くて整理が難しいというのに、大丈夫なのだろうか(近頃は情報盛り込みすぎの映画にわりとみんな慣れているから大丈夫なのかしら?)

 

映像でみると原作よりさらに鮮明に感じざるをえない危なっかしさもありました。

架空の惑星とはいえ、あきらかに貴族的支配層的雰囲気のヨーロッパ人が、中東系アジア系民族の住む砂漠へ行って、そこで戦って人一人殺したら「ジハードの戦士として覚醒した!」というところで今回の作品は終わっちゃったのです。

「このご時世に映像で見せつけれられると60年前に大流行したSF小説だと思って読んでたときよりはるかに現実的なショックがあるなあ」

と劇場で結構ドキドキしたのですが、そのざわつきを製作者がどれくらい自覚的に言及してるのかが現時点では不明確でした。

そのへんも含めて、やっぱりちゃんと完結まで公開してもらわないと私の口が開いたままになってしまうので、本当に頑張ってほしい。

 

はたまた、いっそのこと振り切ってある程度原作やこれまでの経緯とか知ってるファンに向けて作っていこうと思うのであれば、せめてパンフレット!

せっかくあれほど衣装やセットを作り込んだのだから面白いつくりようがいくらでもあるだろうに、なぜ数枚の劇中カットと、キャストとスタッフがお互いに褒め合うインタビューだけで構成してしまったのか。

もっと、羽ばたき飛行機の設計図とか、砂漠の民族が住んでる家の見取り図とか、おそらくはホドロフスキーの時代から膨大な蓄積がある緻密なビジュアルを、多少とも見せてくれればいいではないのっ。

 

というわけで、手放しで褒めるにはちょっとためらうし、誰が見ても面白いとまでは思い難いんだけど、

でも私の世代には「ナウシカっぽいもの」が実写でたくさん出てくるところやら、いちいちのデザインの作り込みの細かさとか、キャストの表現力とか、そういうもので原作を読んでいたときの想像力を補完してもらえるのは本当に楽しい経験でした。