ピンポンと音を立てて遠方より果物来たる、氷点に近い大気の中。
果物の一番美味しい食べ方、というと一概に決めるのは難しいが、雪の降り始める季節に一晩かけてゆっくり冷えながら運ばれてくる果物の、なんともいえない冷え具合というのは、ちょっと再現の難しい稀な美味しさであるような気がする。
冷蔵庫のように冷たい風で冷やしてしまうと、あれは少し乾燥してしまうのだろう、「冬に届きたての果物の味」には及ばないのだ。
箱を開ければ顔を出すピカピカに光った柿の行列が、いかにもいい冷え方をしているので、たまらず料理の手をとめてひとつ剥いて口に放り込むと
「ああ、これは。今この瞬間にしか遭遇できない奇跡的な冷え具合。」
しみじみと果肉の冷たさを歯に当てていると、なぜか遠くでにゃあ、と声がする。
ああ、すまんすまん。
うまい柿に気を取られて猫を締め出していたか。
それはさておき、宅急便さんが来てくれるたびにいちいち大慌てでどこだかわからないところに逃げ込むのはもうそろそろ止めても大丈夫なんじゃないか。
君たち、黒猫仲間じゃないのかね。