鎌倉右大臣であるところの源実朝という人は12歳で征夷大将軍に就いたはいいが北条の言いなりになる外の道はなく、不本意な人生をおくってるうちにたった28歳で暗殺されてしまう。
2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では世継ぎを作らねばならない身分だったにもかかわらず性的指向が同性のみに向いていることに苦しんだ人として描写されていて、その点においても大変に切ないキャラクター造形なのが印象的だった。
当時はまだ荒っぽい辺鄙な田舎だった東国で、おそらくは最下層労働者であろう漁師が小さな船を運んでいくのを見て強く孤独を感じてしまう青年像というのは非常に悲しげなものがある。
それはそれとして、この歌をよむと「もがもな」の音を思いついたところで「よっしゃー、この歌はもらった!」と心のドヤ顔出しまくりだったんだろうな、という気配もぷんぷんとあるのも一方でかわいい感じがする。
たしかにいいよ、「もがもな」のところと、「綱手かなしも」のところ。
本人がどれだけ孤独で辛い未来しか思い浮かばない人生を送っていたとしても、それでもいいこと思いついた瞬間瞬間には、また別腹でさぞ浮かれたことであろうと思うと、人間って多元的な存在でいられて良かったよねえ、という気になる。
実朝はしんみりかわいい。