晴天の霹靂

びっくりしました

ありとあらゆるパプリカの夢

元旦に紅白歌合戦が見逃し配信されていたので、ラジオ中継で音声だけ聞いて気になった部分をざっと映像で見返したりしました。

 

今年も、一番心に刺さったフレーズはDA PUMPの『USA』のなかの「どっちかの夜は昼間」でした。去年も聞いたような気がするけど、歌詞テロップつきで見るとしみじみ素晴らしい。これくらい、馬鹿っぽいけど直感的には超正しい雑な発言をできる人になりたいものです。世の中どっちかの馬鹿が賢いってことでもありますからな(なんとなく意味ありげな空虚発言)。

 

 

紅白は一番最初に出ていたのがFoorinの『パプリカ』で、2019年にはあちこちで耳にしたので曲こそ知っていましたが、どういう人たちが歌っているのかちゃんと見たことがなかったのです。予想以上に若い人たちが予想以上にキレッキレで飛びはねておりました。

 

ところがこちとら間の悪いことに年末に筒井康隆の『パプリカ』を読み、今敏の『パプリカ』を観ていたところでした。

トラウマを抱えた人の悪夢を延々と描写した文章と絵を見続けて疲れたところで、紅白歌合戦という祝祭で色鮮やかな衣装をつけた子供たちがたくさん登場し、大人が望む子供らしさを120パーセントのフルパワーで再現しつつ歌い踊る様を見ると、ちょっと怖いものです。

 

おそらくは誰の子供時代にでも存在するであろうトラウマ、大人の顔色をうかがって自分の行動やら願望やらを調節した挙句、何をどうしたらいいやらまったくわからなくなって進退窮まれり、という状況を思い起こして「むーん」と悶えつつ、凝視。 

 

そんな歌の途中で、40年前からそのままのガーリーかつドーリーな衣装を身にまとった松田聖子が追加の子供たちの手を引いて人口過密気味の舞台に登場してくるにいたって、本当に今敏のトラウマ悪夢の風味もいよいよ仕上げ、息も絶え絶えになることです。

……いや、ショーとしては人を惹きつける演出だろうとは思うのです。全年齢層を意識したエンタメ度の高さは分るのですが、多くの大人にとってはあれはトラウマティックではないのだろうか?

 

 

パプリカ

パプリカ

  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: Prime Video
 

  公開された当初、異常な精神状態を物量で表す偏執的な書き込みの細かさに世界がびっくりしたのは、なるほどそうだろうと思うのだけど、何をやっても世界があんまりびっくりしなくなった昨今見直すと、むしろ人物の表情描写が苦手に見えるのがちょっとユーモラスだと思ったりします。ヒロイン千葉敦子は超絶美人のはずなんだけど、その点はあまりピンとこないご愛敬。

 

パプリカ (新潮文庫)

パプリカ (新潮文庫)

  • 作者:筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/10/30
  • メディア: 文庫
 

 わざわざ虚構であることを強く主張する虚構の世界を出たり入ったりする様子はすごく面白いんだけど、相変わらず私ってばSF小説を読むのが苦手でストーリーの途中で迷子になりがち。あとこちらもやっぱりヒロイン千葉敦子が、あまりにもおじさん向け理想像で描かているのが頭に入りにくい要因であったりします。「それはない」と普通のテンションつい突っ込んでしまう。むしろおじさんになり切って読むべきだった。

 

 

インセプション (字幕版)

インセプション (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 『パプリカ』と言えば『インセプション』。2010年の公開時に劇場に観に行って「CGってすごいことできるんだなー」ということ以外ほぼ理解ができなかったクリストファー・ノーラン作品です。

『パプリカ』を読み終わったこのタイミングなら理解できるのではないか、とついでに見直したのですが、夢の世界のルール解説があんまり長いため中断したところでレンタル期限が切れる、という事態が発生。宙ぶらりんのところでその世界が終わらせるのも『インセプション』っぽいかも、ということでそのままになってます。不要なルールが多すぎる気もするけど、詰めが甘めの映画作品自体は嫌いではないのよ。