初夏といば、ぶらさがり野菜の美味しい季節。
昨今のピーマンは、どちらの農家さんのご尽力のたまものか、実に丸々ツヤツヤしていて苦味も全然なく、ほとんど果物のようにうまい、と思うのですが、子どもたちは今でもピーマン嫌いなんでしょうか。
いかにも新鮮なピーマンを買った日には、家に帰って冷蔵庫にしまう前に、ついまるごとバリバリ齧り始めてしまい、どうかするとそのまま一袋食べ終わりそうになって途中で我に返ったりもします。
こういう場合、味覚が狂っているのは「統計上ピーマン嫌いらしい子どもたち」なのか、「私」なのか、どちらと言うべきか(絵面が狂ってるのは間違いなく私)
こんな初夏はとくに、子どもの気持ちがわからない。
近頃、少しばかり文明におもねる方法を思いつきました。
やはり大袋から出してそのまま、ひょいぱくひょいぱく、みたいな感じでただ口に放り込んでいくのでは、あまりにも欲望に直結しすぎているという批判も免れまい。
そこで、とりあえず袋からとり出したピーマンは皿に置くのです。
皿に置いたらレンジに掛けるのです。
3分か4分か、くったりするくらい。
くったりしたら、取り出して鰹節と醤油を掛けて、アチチアチチと言いながらまるごと食べるのです。
食器と、加熱と、醤油と、鰹節のおかげで、食事らしい形式と文明社会への迎合を実現することができつつ、ワタもヘタも本当は全部おいしいという野趣は残せる。
すばらしいアウフヘーベンが発生する瞬間。
一番好きななのはやっぱりキッチンのすみっこで『料理の鉄人』のときの鹿賀丈史ふうにかじりつくことではあるのですが、もはやパプリカといえば鹿賀丈史ではなく米津玄師という時代。
最近は「レンチンおひたし」も、だいぶ熱心に食べています。
鹿賀丈史にかじられているときのピーマンは輝いていた。ずっと昔のことのようだね。