晴天の霹靂

びっくりしました

イチョウ色の公園、ピンク色の少女

「紅葉の季節ってこんなに目に染みるほど派手だったかしら?」

と、何度も思ったほど今年は紅に染まる葉も黄に染まる葉も、鮮やかに見える。

寒暖差の具合とか、空気の乾燥度とか、日照時間とか、何らかの数値を計測すると実際に紅葉度の認定が出せるんじゃないかという気もするが、「今年は紅葉の彩度がとみに高い」というニュースはまだ聞いたことがない。

してみると、私の気のせいなのだろうか。

 

祝日とあって、空も地面も色とりどりに染まった公園の中を、小さな冬物外套を着た子どもたちが転がるようにお父さんやお母さんと遊んでいる。

この一日が過ぎてしまうのが惜しくてつい立ち止まるほど美しい光景である。

 

ピンクのちっちゃいダウンジャケットを着たブランコの女の子の背中をお父さんが何度も押してやっているのが見える。

もう長い時間そうやっていると見え、お父さんの方はどうやら飽きているのだ。

 

そうそう。子どもの頃は、大人も自分らと遊ぶのが楽しいんじゃないかな、と思っていたものだ。

実際大人になって友達の子どもなんかを構っていると、子どもと遊ぶのがあまりにも忍耐力が必要なのでびっくりした。

「そうか、あの時、大人は面白くて私と遊んでたんじゃなかったのか!」

別に自分がダイレクトに楽しんでるわけでなくっても「この子が喜んでくれるのが面白い」というスイッチがあることも知るのは、まあまたそれとは別の話だ。

 

でもお父さん、そのブランコの背は、ぜひもう少し押していてやってほしい。

あなたの目線からは、見えていないかもしれないけれど、その子のブランコは今ちょうどイチョウで黄色く燃える空の中に飛び込む角度で揺れているのです。

きっと彼女の目には息をのむほどのイチョウ色の空が大写しでうつっていて、この色彩の記憶はずっと長く残るんだと思うから。

そんなことをつい思ってしまうくらい、もったいなくて贅沢な色彩の、秋。

 

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着ぶくれて少女いちょうの空を蹴る

今週のお題「急に寒いやん」