晴天の霹靂

びっくりしました

確信は持てないが、気になって仕方ない

全然確信を持てない話である。

毎回毎回気になるので、あながち気のせいとも言い切れないと思うのだが、人間の感覚は当てにならない。

どこかの時点の思い込みがその後の経験にバイアスを掛けていないという自信までは持てないのだ。

 

いつのころからから、iPhoneをマナーモードにしたときの音声通話着信の自己主張が異様に弱くなってはしないか。

人前でいきなり電話がピロピロ鳴ることが嫌なうえに、細かく切り替えるほどマメな性格でもないので、私は常に携帯電話はマナーモードで使ってきた。

バイブレーションは実際のところ結構響くもので、置き場所によっては着信音より響くことすらあり、不便を感じたことはこれまで一度もなかったのだ。

 

それが、いつのころからか。

ここひと月くらいのことではないかと思われるのであるが、相当静かなところに居ても着信に気付けずに、ふと画面をみたときに「つい今しがたの着信を取り損ねている!」と発覚することがたて続いている。

一度や二度なら「たまたま気付かなかったのかな」という程度であまり気にしないが、続けざまに起こりすぎるので気になってきたのだ。

着信を知らせる振動が弱くなった、もしくは振動しなくなったのではないだろうか。

 

これまではバイブレーションたるもの、机の真ん中にスマホを置いておいても振動によって机の端まで自力で旅をして、端から落下して存在を主張してくるくらいのガッツはあったものだ。

それがふと目をやるといきなり「不在着信がありました」という通知が出ているほど存在感を消しているとはどういう堕落か。

「そもそも振動しなくなった」のか、「気付かれないように遠慮がちに振動している」のか。

 

困ったことである。

不便だし、場合によっては周囲にも迷惑をかけかねない事態ともなる。

解決へ乗り出すのならばまず今発生しているこの状況が「単なる私の感覚的な思い込み」なのか「iOSの仕様に何らかの変化が実際起った」のかを知るべきだろう。

知るのは別に難しいことではなくて「iPhone マナーモード 気付きにくくなった」とかで検索してみればいいだけのことではある。

何か出てきたら私だけの問題ではないし、たいしたものがヒットしなければ気のせいである確率が高い。

 

だがしかし。

頑なに検索を避けたまま、私はiPhoneに向かって心中密かに呼びかける。

「さあ歩け。バイブレーション機能の矜持があるのなら机の端まで歩いてそこから落下するほどの覇気を今こそっ!」

なぜって、「実はそれほど真剣に困っていない」というのがひとつと、「自分の感覚がいかに頼りにならないかを気に留めておく経験が最近結構貴重になってきた」ということがある。

これは気のせいなのかなあ、私だけかなあ。いやあ、おかしいと思うけどなあ。と不審がりながら悶々と暮らす経験が、若干懐かしい。

 

わしらが子どものころは、家にある一番大きな辞書「広辞苑」に書かれてあること以外は、だいたいが「よくわからない」という闇にうっすら沈んで生活のそこここに潜んでいたのじゃ、若人よ。

すぐ傍らの無力感って、結構悪くない感覚だ。