先日、久しぶりに「人生でもっとも見通すのがきつかった映画のひとつ」である
ソクーロフの『ファウスト』のことを思い出したのをきっかけに、
せっかくだからもう一度見直してみるという蛮行に挑みました。
いや、今なら私だって前に見たときよりはファウストをよく読んでいますし、
なんといっても名監督の誉れ高い人の作品でもあります。
いくらなんでもあんなに退屈だったのは自分の方が悪いのではないか、と反省をしたのです。
我ながらわりとそういうところ、真面目というかスノッブというかぐるなび世代というか、こんがらかったものを感じないでもないが、見ると決めたら見る。
実際、前に見たときよりはだいぶ面白くは感じました。
なるほど、あのセリフがこうなるのか、
このキャラクターはこういうイメージにしたのか、とか
監督の解釈を推理しながら見るとさすがに退屈まではしなくなっていてありがたかったです。
とはいえやっぱり全編暗いし、なんとなく臭気がしてきそうな画面というのが結構つらいし、悪魔が全然魅力的じゃないし、時々画面が歪む理由もわからない。
やっぱり好みではない、ということを確認した次第。
私は陽気なメフィストフェレスが好きなんだよ。
何より、最初に見たときすごく気になっていたことを思い出しました。
美と若さと無垢の象徴ともいえる美少女マルガレーテが、いまいち美少女なのかどうかわからないのです。
いや、美少女であること自体は疑わないけれど、微笑むときになぜか猫が靴下を嗅いだときみたいな顔になるのがとにかく不思議なのです。
これを、どう解釈したもんかわからない。
この女優さんの表情のクセなのであれば、単に私が失礼なこと言ってるだけですから、「ちょっと私のタイプじゃなかったみたいです、スイマセン」で済む話です。
しかしながら役者さんとしてはあまりにも特異な表情の作り方であるような気もするので、そうなるとやっぱり何か意図あっての演技なのか。
猫のフレーメン現象みたいな顔をするマルガレーテに一体どんな意味ガッ?
などと考えだすと、なんとなく気が散ってしまうのではありました。