晴天の霹靂

びっくりしました

カパッとならないマジナイを。

なんとなくバタバタしてる間に三月がしれっとやって来て、もうひな祭りなのだという。

我が家にも年若い女の子が一人いるが、彼女は猫なのでちらし寿司もはまぐりのお吸い物も特に欲しがらない。

 

子どものころは、「ひなまつりにはまぐりのお吸い物」という文化がなく(地域的になかったのか、家庭的になかったのか、という点については判然としない)大人になってから知ったときにはちょっと面白かったものだ。

 

二枚貝はバラバラになっても特定の貝とだけカパッと合うことから、女の子に貞操を教えるためにはまぐりのお吸い物を食べるようになったという話の、時代に合ってない感は改めて味わうとやっぱりちょっと面白い。

まだわけわからない年齢から一体何を教えとるんじゃ、という感想を持つのはそんなに急進的でもなかろう。

 

外に出ることもなく完全室内で人間およびもう一匹の猫と暮らし、貞操概念の持ち込みようもない生活をする我が家のギャル猫は、しかし考えてみればやや問題もある。

彼女は、よくカパッと寝るのだ。

兄にあたるもう一匹の猫だってそこまで大股開いて寝ることはないし、飼い主だってさすがにあれほど大胆にお腹放りだして寝ることはないのに、なぜに彼女だけ無頓着にあちこちでカパッとなるのか。

 

21世紀の猫である、好きに生きればよい。

「女の子らしく」なんてことは言わない。

しかし人間が踏んで歩くところでそんなに大っぴらに腹を出して足を開いて無防備にしていられると、こちらが怖いのだ。

何を根拠にそれほど私を信じる気になってるのかは知らないが、こちとら「何もないところでつまずく」という奇行さえ常に視野に入ってるレベルの不器用だ。

ジェンダーのためではなく、互いの安寧のために足元にみかけるたびに

「そこでカパッとなるな、カパッとなるな」

と声をかけざるを得ない。

 

はまぐりは、カパッとしないマジナイになるだろうか。

(注:猫に貝は危険)