豊平川にかかる橋を渡っていたら、向こうから歩いてくる十代と思しき女子の着ている黄色と黒の派手なTシャツが目にとまる。
「あのバットマークは久しぶりに見る気がするなあ」
と思ったあとで、あんなに若くってティム・バートン版のロゴを今着てるのはきっと新作の『ザ・フラッシュ』を観てマイケル・キートンを気に入ったのに違いない、などと予想してみる。
ティム・バートンのバットマンはジャック・ニコルソンの印象ばかり残っていたせいで、マイケル・キートンのブルース・ウエインがどんなに良かったのか長らく忘れていた。
先日だいぶ久しぶりに見直しながら
「あれ、この映画こんなに素晴らしかったかなあ。そうかあ」
と感心したところだった。
よくこんないいものを思い出させてくれたフラッシュよ。
サブスク時代に新作映画きっかけで1989年のバットマンも気に入ってTシャツを買ったのであろう10代の少女と、マイケル・キートンのことをすっかり忘れていた40代の元少女が橋の上ですれ違うなんて、こんなフラッシュぽいエモい経験があるだろうか。
各々の世界線で頑張ってやっていこう、未知なる友よ。
ところで1989年の時点から今までずっと謎のままのことがある。
バットマークが、相当に集中しても私には「黄色い隙っ歯のマーク」にしか見えないのだ。
これがコウモリだと聞いたときに、ものすごく頑張って意識を集中したところ、ちょっとそう見えたので一応は納得したが、その後も油断するといつも隙っ歯マークに戻り続ける。
本当のことを言うと橋の向こうからごきげんな映画好き少女が歩いてきたときも
「見覚えのある隙っ歯が歩いてくる」
と思ったものだ。
少女は素敵だが、デザインは妙だ。
正直なところ、一体みんなにはどう見えているのか。