1月3日公開の『ロングショット』を観てきました。
ここのところ、お正月中は一本は映画を見に行くのが恒例になっており、不思議なことに毎年
「年明け一本目から今年のベストを観てしまったかもしれないっ」
と思うほどのアタリ映画を引くんですが、今年も大当たりでした。
そもそも『マッドマックス 怒りのデスロード』以降、シャリーズ・セロンが出ているだけで作品評価が三割増しになるという大変なバイアスがかかり続けているので、ちょっと冷静ではない可能性は担保しておきます。
ゆくゆくはシャリーズ・セロンに睨み殺されたい。たぶん2秒で死ぬ。
目からレーザー光線出るタイプの美貌シャリーズ・セロンは劇中、「キモくて金のないおじさん」たるセス・ローゲンに向かって言うのです。
「口では理解あることを言うけど、男は自分より強い女とデートしたがらないのよ、萎えるから。」
男が自分より強い女とデートしたがらないんじゃなくて、人類としてシャリーズ・セロンが特例的に怖すぎる、という可能性については多いに考えてしまうところではありますが、それをいったん忘れても、まあたしかにそういう役割分担というか、女性の立場が弱いほうが社会的な座りがいいと言った抑圧はいまだにありますよね。
ましてや「萎える」なんていう生理的に不可抗力な現象から説得力を持たされてしまうと「遺伝子のプログラム上、人類は強いメスとそれより弱いオスとではつがいにならないように設計されているのだろうか」などとうっかり思ってしまうところです。
それを、萎えるどころからTPOをわきまえずに勃たんとする積極性によって軽々と乗り越えるセス・ローゲンという新たなる希望です。たまたま、彼にはその手の偏見がまったくありません。ほかの偏見はあって、人を傷つけながら生きていることは多いにあるかもしれないが、男女の社会的ポジションに関する偏見だけは明確にないのが彼の個性であり、この作品の根底に確固として流れるユーモアでもあります。
そしてその画期的な偏見のなさと表裏にある「むしろむやみに勃ちすぎている」という彼のチャームを格好の餌食とし、他人を貶めることに利用していこうとする人々もいます。そんな彼らに向かって目からレーザービームをだしながらシャロン・ストーンはいいます。
「みんなも同じでしょ。私の彼氏です。ガタガタ言わないで、ここは自由の国です。」
思い出すだに、爆笑しながら涙の出てしまうシーン。私の彼氏です。
本当にとても楽しい映画だったのですが、それにしても、日本における宣伝が気になります。なぜわざわざ山ちゃんを連れてきてことさら「高嶺の花を射止める方法」みたいな切り口を強調させたがるのか。シャロン・ストーンの話ちゃんと聞いてた?
シャリーズ・セロンを「造形が整いすぎてかえって個別認識にくいタイプの美人」という認識から「目から怪光線出せる唯一無二の役者」という認識に一変させられたターニングポイント。モノクロ版が一番好き。