晴天の霹靂

びっくりしました

初鴉出て行きたがる猫止める

近所のパン屋さんへ行く。

パリパリの生地のアップルパイは、焦げやすさのギリギリを攻めた職人仕事のお陰でいかにも香ばしく焼き上がっている。

ポテサラパンは、まったくてらいのないみっちりしたコッペパンに千切りのキャベツとふわっとしたポテトサラダが挟んであり、むやみに中年を泣かせる率直な味がする。

客が三人入ると互いに身動きが取れなくなる極小の店内は、いつ行っても人が途切れる様子もなく、こういう店はうまいに決まっているものだ。

 

私が入店した先客はすでにレジにて会計をしている初老の男性で、みればトレーにはうず高くパンを積んでいる。

私が後ろに並ぶと、男性はお財布から一万札を取り出して会計をすませた。

「こんな小さな店で週末の午前中から万札を出すとお店も困るのでは」

という思いも一瞬よぎったが、きっと近所のおなじみさんなのかもしれない。

いよいよもって松も明け、「そろそろいつものパンでも買ってくるか」と少々はしゃぎ気味に大きなお札を持って家族全員分の好きなパンを買いにきたのであれば、お店の方とてこれは嬉しい光景だろう。

つられるようになんとなく浮かれながらアップルパイとポテサラパンの支払いを済ませた私も道々、松飾りなどを数え上げては、

「お飾りももうおしまいですね、本格的に一年がはじまってしまいましたね」

という気持ちになっている。

 

年末の料理の支度でフライパンの縁に押し付けて5センチくらいの火傷を作ってしまった手の甲も、今やかさぶたに変わって、痒くて仕方ない時期に差し掛かった。

普段のルーティンと違う行動ばかりするので、なんとなく落ち着かなかった猫も、終わりなき日常に納得してきたようである。

つまりはまあ、2023年。