我ながら思いがけないことに、近頃少々写経をしている。
思ったよりずいぶんとカジュアルにできるもので、薄い和紙の下にお手本を挟んで上からなぞれば、あの虫みたいに細かい毛のたくさん生えた複雑な漢字を知らなくても一応ちゃんと書けるようになっているので驚いた。
写経用紙と、そこらへんで売ってる細字の筆ペン一本あればできる。
夢中になって書いてると、これが案外と面白いものだ。
「色即是空」と書いて、この漢字はゴロもいいし、字の意味も分かりやすいし、音もいいし、いい気分だな、などと上機嫌になっていたら、そのあとで、しかし「空」ってのはあれでもない、これでもない、とか言ってるらしき文字が延々と続いていって
「うっそ、さっきと言ってることなんか違くない?」
と戸惑っていたら、結局何のことだかいまいちよく分からないままにいきなり「ぎゃーてーぎゃてー!」とか派手に景気づけてもらって終わる。
ちょっと煙に巻かれたっぽかったけど、かっこいいから良いような気がする。
なんか、元気づけてもらったようだし。