今週のお題「ホワイトデー」
実は私は知っている。
「ホワイトデー」には公式サイトがあることを。
全国飴菓子工業協同組合という組織が作った「えっ、今時そんなっ?」と思うほど素朴なサイトだ。
1980年にはじまったとあるホワイトデーの歴史は、私のように年齢がそこに近い人間にとってみれば自分が育ってきた時代の風俗史を読むようで、見ると案外面白い。
パソコンもない、SNSもない時代、だけど急速に拡大しつつある消費社会を背景に、特別な宣伝のノウハウをもたない企業のおじさんたちが「ホワイトデー」という思い付きをバズらせようと奮闘した記録だ。
とりあえず、何回読んでも理解できないところがある。カンロ飴でお馴染みのカンロの大西さんという人の発言だ。
大西 社内的にも何の反応もないわけ。何をやってるんだ、あいつは(笑)、という感じなんですよ。これじゃいけないと思って、社内で大英和辞典のホワイトというところをひいてみたら、シュガーとかスィートがでてきた。そこでシュガーをひいてみるとキャンデーとあった。ホワイトイコールキャンデー。スィートラブ(純愛)イコールホワイトラブと、ホワイトデーがキャンデーにつながっているんですね。単なる語呂合わせなんですが、やったと思いましたね(笑)。
なんとなく「してやったり」感を出しているが、全然わからない。
ホワイトがシュガーでシュガーがキャンデーだとホワイトはキャンデーなのか。英雄は色を好むのか。
そもそも語呂合わせって、そういう意味だったか。
続いてはみやこ飴本舗の中西さんの謎の取り組みである。
中西 「ホワイトデー」という名前を浸透させるために、私も一役買ったんですよ。地下鉄に乗って、駅に近づくたびに、「ホワイトデーって知っているか」「ホワイトデーってのは、キャンデーを女の子に返す日だぞ」と相棒に大声を出して、落語みたいなことをやりました。
人力リツイートである。
しかし、「駅に近づくたびに」なのかがわからない。
駅が近づいてくると乗降のためにドア付近に人が集まってくるのを見込んでドア付近で立ってしゃべっていた、という話なのだろうか。
走行中はうるさくて聞こえないから、速度が落ちてくる駅付近になるとやおらしゃべりだした、ということなのだろうか。
駅を通過すると降りる人と乗ってくる人両方に聞かせられるから効率が倍になるという意味なのだろうか。
1980年の風俗は遠い。
大人になってからというものキャンディーが特別欲しいと思うことはあまりないが、「サルミアッキ」だけは、「たまに食べたいかも?……いや、いらないか。やっぱりあったら食べたいけど!」くらいのことは思う。
人生がぴりっと締まる味がする。