この夏は「今さら『百年の孤独』が文庫化される」という唐突な現象が各方面に衝撃を与え、私も買う予定もないのにわざわざ書店に見に行くなど無駄に祝祭感を楽しんだものですが、実は同じくらい衝撃的だったことがあります。
いつの間にか、クレイジーソルトの蓋が変わっていた。
……いつからですか?
クレイジーソルトは何度買っても色々と驚かされる対象で、まずは何より名前がすごい。売り場で見るたびに正気とは思えず「これ、合法なのかな?」と不安を覚えるなにかがあります。
それから、手に取ったあとで驚愕するのが値段。600円ばかりします。
「えっ、塩なのに?」と思って二度見したあとで棚に戻すなどいじましい躊躇いを一応見せるのでありますが「しかしまあ、一回買えばしばらくもつだろうからいいか」などとぶつぶつ言いわけしながら結局買います。
これが、家にあると非常に便利ですね。
サラダなんか、ドレッシング作るのが面倒なときは野菜に直でオリーブオイルとポッカレモンかけてクレイジーソルトふりかけて、雑に食べますうまいです。あと、ちょっと変わった味にしたいものにはなんでもいきます。冷奴とか、オートミールとか。
「岩塩、オニオン、ブラックペッパー、ガーリック、セロリシード、タイム、オレガノ」
ということで、いずれ私の好きな味、あると家にいると大変テンションがあがるのですが、開封後しまうときに急にテンションが下がります。
見ると「開封後要冷蔵」って書いてあるのです、塩なのに。
その上で蓋が密封できない紙の蓋です。塩とドライハーブなんていう湿気の吸いやすいものを密封できていない状態で冷蔵庫にしまったらテキメン、いろんな匂いがつくじゃないか。
それはもう、使うたびに、冷蔵庫開け閉めするたびにかすかなストレスだったものです。
「なぜこんなに湿気に弱く虫を呼びやすいであろう調味料に適当な蓋をつけるのか」と思い悩んだ挙げ句、使い切ったタイミングで日本の食品メーカーのハーブソルトに乗り換えてみたりもしたものです。
日本のメーカーらしく衛生的で完璧な蓋はついているものの、味が期待値以上にマイルドで、決定的にクレイジー不足。私が望んでいるのは優しさじゃない、クレイジーなんだ。
いつも半開きの蓋を我慢するか、パンチのない味を我慢するか。私の人生にはその二択しかないんだな、と思いながら売り場に行ったらなんと、ひっそりとクレイジーソルトの蓋が変わっているではないですか。
「……これは、ちゃんと閉まる蓋なのでは?」
悩みすぎて幻覚を見たのかと思って一旦素通りなどもしてみましたが、やはりどうやらちゃんとしたクレイジーソルト。なぜ偽物に見えるのかと凝視したところ、どうも蓋に注力したぶん、全体のサイズが小さくなっている模様ではあります。
しかし、それを加味してもこれはクレイジーソルト界に大きな衝撃なのではないのだろうか。これから先の人生は保存にストレスを感じないでクレイジーソルトを楽しめる人生になると言うことかっ?
なぜ、世間はこの件にかんしてほとんど騒いでいないのか。私は百年の孤独くらいびっくりしたよ。