連休も最後とあって、貸しボートのある池には親子連れがたくさん遊んでいる。
さほど広くもない池の一部でボートが渋滞しているので「危ないなあ」と見やると、渋滞の先に親子連れの鴨が泳いでいるのだ。
旗振り役の鴨の後ろを、握りたてのおむすびくらいのサイズのふわふわした生き物が5,6匹必死についていく姿はさすがに可愛らしく、ボートの上の人間の親子は大混乱の様相。
大変にのどかな5月の日曜日であった。
異変に気付いたのは帰宅してすぐのこと。
「ねこー、ただいまー。ねこちゃーん、どこー?」
などと、いつものごとく大騒ぎしながら部屋に入っていき、荷物を下ろすやら、手を洗うやら、猫を探すやら、ひとりでけたたましくしていたら、ふと部屋が妙に汚いことに気がついた。
カーペットに、点々と赤黒い汚れ。
よくみれば、まさに今踏んできた自分の足跡なのだ。
「なにっ?」
と思って足を上げてみれば、なんと靴下がぐっしょりと血で濡れている。
まったく状況をつかめないまま、慌てふためいて脱いでみると、指先から足裏は血に塗れているのだが、どこも痛くないとあってどこから出た血なのか全然わからない。
痛くないんだから足はどうでもいいか、と思ってウエットティッシュでざっと汚れを拭き、カーペットの掃除の方を優先したが、新たなる血の足跡がついてしまう様子もない。
一段落ついてから、もう一度マジマジと足を眺める。
たしかに冬用のブーツから、夏の軽いウォーキングシューズに履き替えたタイミングなので、指のところがいつもより少しきつく感じと思いながら歩いてはいた。
しかし、新しい靴ではないのだし、靴ずれというほどの痕跡はどこにもない。
しいて言えば中指あたりの皮が多少むけているようには見えるが、ここから靴下がぐっしょり濡れてカーペットに点々と足跡がつく量の血が出ようとは思えない。
私の足から出血の様子がないとすれば、現状を鑑みて残る可能性はたったひとつ。
「靴下が出血した」ということになるではないか。
ひいい、怖いっ、怖いよおおっ。
と、一応ちょっと盛り上がってはみるが、不思議過ぎて実はあんまり怖くない。
なぜ本人から出血した様子がないのに、靴下が血まみれになるのか。
あるいは、これ、なんか信仰に目覚めるやつか?