冬休みのせいか巷で子どもをよく見かけるうえに、正月休みのせいか老人と孫のカップリングが目立つようである。
目の前には未就学児とおぼしき男児と、慣れない孫とコミュニケーションを成立させたくて仕方ないおじいちゃんが居る。
男児はよく通る声を降りしきる雪の中に響かせてしきりにこう繰り返している。
「じいじ、槍を持て。じいじ、槍を持て」
孫が可愛いおじいちゃんも必死で幾度も聞き返す。
「え、何?槍?槍かい?」
ちょっと口が回りきっていないだけで、なにかメチャクチャなことを言っている風ではない。
たぶんこの子と毎日コミュニケーションを取ってる両親ならばきっと聞き取れるに違いない、おそらくはちゃんと意味の通ったメッセージなのだ。
「じいじ、槍を持て」
可愛い二人の横を通り過ぎながら、私もなんとか聞き取ろうと努力はするが、やはり槍と言っているようなのだ。
「あんなに若いのに、討ち入りかなあ?」
シンシンと雪深い、成人の日の出来事である。