新年一本目、『すずめの戸締まり』観てきました。
予想したより楽しんで観れてしまったので帰り道ちょっと反省した。
新海誠監督に関しては、直近三作のポスターを並べると全部同じに見えるあたりで
「うーん、これはもう見なくても大丈夫なのではないか」
と思ってたんです。
並べるとクリスチャン・ラッセン展かなにかみたいで、さすがにこれはないんじゃないですかと。
それでもお正月の映画館の雰囲気を味わいたくて適当な時間にふらっと行ったら、一番上映回数の多いこの作品を見る流れにはなるのです。
いろいろ予断を持って文句を言いはしても、見ればやっぱり内面の一瞬を捕まえて表に出す能力には大変に魅力のある人だというのは確かで
「ああ。たしかに鍵かけておかないと巨大ミミズが出てきて世の中壊するような廃墟のドア、私も何箇所か知ってるわ」
という気持ちになったりはして、それはやっぱり稀有な表現力なんでしょう。
あと、首をどんなにあっちこっちに傾けながら見ても椅子よりは猫を応援する気持ちにしかなりえない引いたユーモアも見る前に思ってたより好きでした。
それはそれとしても、やっぱり説明足りていなくはないか。
大きな物語的嘘をつくなら世界観はあらかじめ説明しといてくれないと、話がどう進んでも「全部後出しじゃん!」っていうモヤモヤは残ってしまうではないですか。
案の定、
「だから、鍵師ってなんなんだよっ」
と思ってるうちに話が終わってしまいました。もうちょっと、なんかないの。
それから、椅子がすれ違いざまに振り向いてしまうほどのイケメン大学生だったり、育ての親はなりふり構わず仕事をするけど「綺麗な人」だったりするところ。
そういう臆面のない側面というか、無意識の型じゃないですか、と感じてしまう記号が多いこともちょっと苦手だったりもします。
とはいえ、まあ楽しかったのですよ。
綺麗な風景の中で若者が頑張ってることに異論はないし、記憶の繊細なところに食い込む表現力にあふれているし、猫は可愛いし、声優さんもいいし。
「思ってたより楽しかったけど、好きかどうかについてはちょっとこれは判断難しいぞ」
などということを考えながら帰りましたね。
そういう帰り道に考え事の多い映画って、基本的には好きなんですけど。
ちなみにアマゾンで無料公開されている冒頭の12分の映像ですが、弁当に花形に抜いた生ニンジンを入れてるのが気になって仕方ないんです。
料理しない人が作画したからうっかりこうなってしまったのか、環さんが弁当に生のニンジン入れちゃうような人だという描写なのか、近頃の若者は生ニンジン弁当を食べているのか。どれだ。