iPhoneは見た目に違わず硬かった。
私は歯ごたえのあるものが全般に好きなので、硬さについてはむしろ好ましい印象を持ったが、何しろ苦く、あまり美味とは言えない。
しかしまあ、食べ始めてはじめてしまったものなのでちゃんと食べきろうと咀嚼しながらこう考えた。
「iPhoneSE3を食べちゃってるけど、どうせなら古くて使ってない6sを食べるべきだったよなあ」
目が醒めて、ひどい初夢であると思った一方、これはきっと昆布巻の暗示であろうと、私は分析した。
おせち料理の昆布巻きをどうするかをここ何年も迷うのだ。
失敗さえしなければ、昆布巻は自分で作ったほうが絶対に安いしうまいし正月すぎまでおかずとしてたっぷり食べられる優秀な作り置きである。
しかし一方で、硬すぎるの、やわらかすぎるの、味が染みないの、そもそも縛るのが面倒くさいのと、どのルートに進んでも必ず失敗へ続く落とし穴がある。
年に一度くらいしか作らない人間がうっかりうまく行ってしまう気がぜんぜんしないので、安全を期して出来合いを買ってきては
「こんなに味が濃いって、ほぼ失敗作じゃんか!」
などと憤る羽目になる。
今年のできあいの昆布巻も味が濃かった。
「ああどうせ買っても失敗なら作って失敗すればよかったのではないか」
と思ったのが、苦くて硬いiPhoneを噛みしめる夢だったような気が、私はする。
かく、成功もあり、失敗作も詰め合わせての、おせちってもんである。
新年明けましておめでとう。
今週のお題「初夢」