晴天の霹靂

びっくりしました

2022年印象に残った小説

 

異形の愛

世にあまねく存在する愚鈍な「フツーども」を見下し、「もっともっと奇形になりたかった」と願うサーカスの花形一家没落の物語。

物語の中で貫かれている「バラエティこそが美しいんだ」という鼻持ちならないまでの特権意識は、「みんな違ってみんないい」とか言いながら均質化を押し進めていくような目眩ましイデオロギーをなぎ倒して圧倒的にパワフルで、読んでて本当にぴりっとした。

私ももっと異形になるべきだ。

 

ジュリアン・バトラーの真実の生涯

恋愛小説の一代記としても面白いし、クイア文学の手引書としても抜群に面白い。

ネットフリックスで公開されているドキュメンタリー『アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ』を見てたらアンディが銃撃された事件のことが描かれていて、

「このシーン、あの本で読んだっ」

となって、また読み返したくなった。

アンディ・ウォーホルの作品をクイア性を軸に見たことなどなかったので、なんとなく読み流していたけど、ネットフリックスとセットでまた楽しい。

 

長年無いことにされてきたけど確実に存在し続けていた世界から、ただ無感覚に存在する世界に向かけて放たれる言葉の力強さね。

www.netflix.com

 

失われた時を求めて

『ジュリアン・バトラー~』からの流れで読み始めて、順調に読み勧めていったところで、まだ半分しか翻訳が出版されてないことに気づいて衝撃を受けたというのが今年の読書上の大事件。

「どうしたもんか」と思ったものだけど、これからリアルタイムで一冊ずつ続きが出版されるたびに買って読むという楽しみが人生にあると思うと、なんかプルーストと同時代を生きてる人みたいでむしろ楽しい。

たぶんまだあと7冊分くらいは残ってて、直近の『ゲルマントのほう』の出版からはもはや4年経ってるはいるのだけど、個人訳に手をつけられた以上はきっと完訳するつもりで人生をやりくりして頑張ってくれてるのだろうし、こっちとしても「最後まで読むまで生き延びるよっ!」という、ちょっとしたイベント感が出て、めっきり楽しくなってきた。