晴天の霹靂

びっくりしました

芋を掘りに。

「芋を掘りに来ないか」と誘われた。

この物価高の折、「行く行く」と二つ返事。

到着するなり、芋はさておき「訪問販売?」っていうくらいの量の野菜を広げて見せられる。

「これ、かぼちゃね、一ヶ月くらいこのまま干して。小さいからまるごとレンジにかけたら切りやすくなるから」

「なるほど!」

「モロッコいんげん。食べ方わかる?」

「あ、ささげ(たぶん北海道弁でさやごと食べる豆類のこと)ですね。煮つけとか。」

「あとこれナスでしょ。きゅうり。こっちパプリカ。枝豆。南蛮いる?」

「じゃあ少し」

素手で触るとヒリヒリするから」

「あっ、はい」

「とうもろこし。こっちは白いのね」

「生でたべられるやつか」

「そうそう、生で食べられるけど茹でた方がうまいやつ」

「………(それは言わない約束なのでは?)」

「じゃあ芋掘るか」

「はいっ」

軍手をつけて土の中からキタアカリをごろごろ拾っていると、それも面白いのでうっかり10キロぶんくらい拾ってしまう。

「さすがにこんなにあってもな」

とでも匂わせると

「日に当たらないようにして風通しいい涼しいところにおいておけばもつから」

と、なんとしても持ち帰らせるべく色々アドバイスされる。

ものすごくありがたいものだけど、ともすれば量がありすぎることに双方困惑してる感じがちょっとおもしろい。

広い貯蔵庫でもあれば、あればあるだけありがたいに決まっているが、今どきの住居はだいたい野菜は数日分だけちょっとずつ買ってくるようにしか作られていない。

 

「それにしても」

と、自宅の台所でとれたての野菜と片端から茹でたり漬けたりしながら思う。

とれたての野菜がうまいのは知っていたが、実際びっくりするくらいうまいな。

ロッコいんげん胡麻和え、なんていうやたら渋いものをつまみ食いし始めたらスナック菓子みたいにひょいぱいひょいぱく手が止まらない。

とりたてて好きだと思ったことはなかった野菜だが、実は好きだったのかもしれない。

 

練習中の静物画家のように、巣を作るカラスのように、いたずら好きのかわうそのように、ツヤツヤぴかぴか具合をよく観察するべく野菜を並べて眺める。

土と太陽の光から一年でこんなにいろんな形状のものができる。

なるほど、これは実際すごいことだ。

秋の獺祭図