面白かったけど私の理解力ではあんまり太刀打ちできなかった映画『NOPE』、公開後最初の週末が終わって、見た人も増えてきました。
見た友達と「ちょっと、あれどういうことなの?」なんていう話をしましてね。
面白いもんで理屈型の映画ファンって、分からないことを聞くとだいたい何かしら答えてくれるんですが、あんまり合ってる気もしない、というのも愉快です。
「なぜ靴が立っていたんだ」
「偶然」
「靴は偶然立たない」
「しかし他に考えようがないじゃないか」
「意味のない現象を意味ありげに3回も映す映画なんて相当駄目だろう。シン・ウルトラマンじゃないんだから」
「……だからシン・ウルトラマンの悪口はっ!!」
というようなやりとりをしてると、みんなたいして理解できなかったんだなと思ってホッとしたりするもんです。
ともあれ、人と一緒に多少揉んだりしてると、まあそういう映画だったのかなあ、というような感想はやっと少しはっきりしてくるものでやはり面白い。
思うに、見ることの暴力性と見られることの居心地悪さに関する映画だったような気がするなあ。
なんてことを考えたりしながら過ごした週末。
偶然、すごいものを発見しました。
俳優の杏さんのYou Tubeチャンネルで「親子で一緒に料理をしました」なんて動画が上がっており、ケン・ワタナベが台所に居るではないか。
違和感の凄さに感動してうっかり再生してしまったら、父がカッコ良すぎて不自然なこと以上に、娘が絶対に父と目線を合わせない気まずさがぴりっとして素晴らしいんです。
終始目線をそらしている上に、ふたりともカメラという「他者の視線」はずっと意識しながら振る舞っている。
「NOPEだっ!リアルNOPEだっ!」
と興奮したことです。
巨大すぎるもの、見ることに無自覚でいる超越者と、不用意に目線を合わせると危ないもんですよ。
「そうかあ。今のところNOPEの一番の解説動画これだったなあ」
と思いながら枝豆のポタージュとか作るのをぼんやり見てしまったのでした。