『エルヴィス』見てきました。
いやあ、楽しかった楽しかった。
プレスリーって私にとっては、親世代のスターであり、情報の入り順として「田舎のプレスリー」あたりを先に認識してしまったせいで、完全なイロモノ枠だと思っておりました。
ド派手で肥満のおじさんがクネクネ歌っているのを真顔で見たところでどうしていいやら、と困惑していると、本当にかっこいいと思っている世代たる親なぞは
「『監獄ロック』でも聴いてみろ」
などと言い出すわけです。
素直に聴いてみるのはいいが、
「やっぱり見た目通りにダサいじゃん」
なんてリアクションに困ったものでした。
そんな私の思い出とは関係なしに、映画の中にいるエルヴィスという人はまだ名前のない感情の中で困って立ち尽くしている徒手空拳の若者です。
ステージの上でだけその感情をぱっと爆発的に表現できる能力含めてなんとなく人を魅了するところは、どうやらたしかにある。
そうしてどのステージまでいってもずっと寄る辺ない青年のままでいつづけて、ついには使いつくされてなくなってしまいます。
なるほど、これはたしかにダサくて、意味不明に気になって、居るだけで人を困らせる存在ではあったろう。見てられないが、見ていたい。
若くもないし、世代でもない私ですらだんだん心が動かされてきて、「誰だってみんな、まだ名前のない感情の上に立っているんだから、私もかくやっていこう」なんてちょっと興奮したりして。
そういうふうにむやみな感情移入をして、いくばくか人生が変わったみたいな気分で映画館出てこられるのは、まさに映画の楽しさではないか。
しかしあの程度のクネクネ踊りでパンツ脱いじゃうくらい客席が狂乱するって、どれだけ抑圧的な時代なのかとは思ったな。