小結しらたきが美味しいことに気がついたのは、うかつにもごく最近のことである。
「蒟蒻なんだから別にたいした味もないじゃないか」
と思ってはいけない。
小結しらたきは、結んであるのだ。
つまり、結び目がこりっとする。
賞味期限が案外長いから見かけるたびに買って冷蔵庫に入れておく。
寒い季節にロングランを続けがちなおでんや鍋に入れて食べるのはもちろんうまい。
豚汁のときも当然うまい。
味噌汁の具が寂しいときに「あら、こんなところにしらたきが」と、思いつきで入れてみるのも楽しいものである。
それから、サラスパ。
美味しいけれど、主食なのか、おかずなのか、身分がはっきりしないことが悩みの種であるサラダスパゲティを作るときに、パスタのかわりにしらたきで作ると一気におかずとしての座持ちがよくなる。
これはパスタのイメージで作ると結んでないしらたきでやりそうになるところが、ここはぜひとも小結しらたきなのだ。
結び目のこりっとしたところに、なんとも言えない味の絡み方をする。
考えてみれば、細くて長くてあんまり味のしないものがもともと好きだった。
マロニーさんも、春雨も、葛切りも、フォーも全部好きだ。
しらたきだけ、こんにゃく芋の可能性をなぜか狭めに見積もってしまうという偏見から肉じゃがのときくらいしか親しんで来なかったのは、返す返すも愚かなことであった。
ずっと、しらたきは何にでも使える逸材だったのだ。
こりっとして楽しいし、日持ちもするし、安いし、味に角が立たずに誰とでも仲良くする。
小結しらたきは、メーカーによって何種類か出ている。
高い方を買ったとしても高いものではないので、色々試してみてあげてほしい。
ものによっては結び目のところに「こりっ」が不足しているときがある。
自分の好みにあう「こりっ」を見つけるのが大切なことだ。
そして「ダイエット用代替食品」などという機能性に貶めたりせず、ありのまま愛するに足る個性の持ち主であることに気づいてあげてもらいたい。
小結しらたきには、まず最初に
「四角いこんにゃくを細く長くしてみる」という好奇心に満ちた発明があり、その次に
「細くて長いこんにゃくをしらたきと呼ぶ」という雅な洗練を経て、
「せっかく細くて長いから試しに結んでみる」という遊び心にまで発展した後、家庭の食卓にまで到達した。
あの無骨であくの強いこんにゃく芋から思い起こせば長い長い食文化の旅である。
そもそももっと尊ばれるべきだったのであるが、今やっと気づいた大事なことだ。
好きな食べ物は小結しらたき。