快適な座り心地だけど、一時間超えると思ったよりも尻が痛かったのである。
そもそも長らく無印良品の「からだにフィットするソファミニ」を使用していた。
大変に使い勝手の良いものであるが、なにしろビーズクッションなので使うほどにどんどんヘタれていく。
「他社製のもっと小さい類似品のカバーを見つけて買ってくる」という方法で対処するうちに55*55*38だったものを35*35*25になるまで愛用した。
我ながらなかなかの座り込みである。
ビーズクッションたるものビーズが潰れると座り心地が悪いのかと思いきや、そんなことは全くなく、むしろ座椅子としての座り心地はそのままに極小住宅にも手頃なサイズになって使いやすくなったことを喜んでいた。
それが不慮のアクシンデントにより捨てざるを得なくなったのは悲しいことではあったが、ビーズクッションで十年といえばむしろ驚異的な頑張りだったとも言えよう。
思い切って買い換えることとした。
そこで候補に上がったのが、前々から「ちょっとかっこいいな」と思っていた座禅用の坐布である。
「永平寺で使ってるものと同じ」などと言われてしまうと、これさえあれば何時間でも集中を保ててしまい仕事も人生もバラ色になるのではないかという期待が俄然高まるのが人情というものだ。
実際、座ったときの骨盤の前傾具合や姿勢の安定感は素晴らしいのである。
ただいかんせん、ビーズクッションのように体重が分散して吸収されるわけではないので、これを使って何時間もパソコンに向かうとなると尻は痛くなる。
今まで空気のように使っていた「体にフィットするソファ」が、いかに長時間床に坐るライフスタイルに適していたのかを思い知る羽目になった。
「坐布自体は良い物なんだけど、お尻が痛いことによって集中力が途切れるのはもったいないなあ」
と思ったことと、人間以上にビーズクッションを溺愛していた猫が
「私の寝床を返せ」
と、朝も夜もものすごく不機嫌になってしまったことに抗いきれず、結局は改めて「身体にフィットするソファ」の二代目を買う運びになった。
最近の「体にフィットするソファの小さい方」は日本の住宅事情を鑑みてか、私が買ったときより縦横10センチずつ小さくなっているようで、将来的にヘタって小さくなりすぎるのは心配だが、最初から扱いやすいサイズになったのはさすが無印という気がする。
一方、坐布は坐布で良いものなので併用して使っていく所存だが、「長時間になりすぎると厳しい」ことのほかにもうひとつ家庭で使うには致命的な問題がある。
「持ち手が全然ない」ということである。
クッションのように生地にゆとりのあるものなら片手でつまんでひょいと持てるが、坐布はパンパンに詰まって引っかかりがないため、両手で包み込まないと持てない。
お寺なら片手で持つなんていう雑な所作をしないのであろうが、俗世とは片手でできそうな作業はわざわざ両手で行わないことをモットーとする場所である。
ということで、近所のアウトレットで安く買ってきた謎模様の座布団カバーに入れ、余った隅をキュッと縛ることで持ち手とした。
見た目に難があると思う向きもあろうが、利便性は格段に上がるし、これで洗濯もできるので結構名案ではないか。
「何事も道具は使用目的次第」「それなりの値段のものは長く使える」などという普通の結論に帰着した顛末であった。
無印良品のビーズクッションがヘタってどうしようもなくなってしまった人には、無理にビーズの補充などを考えるよりもニトリのビーズクッションのミニサイズのカバーを買うことをオススメしたい。
夏向きに接触冷感生地でできてるものなんかもあって、色々楽しい。