『ナイル殺人事件』を見てきました。
だいたいこの手のものは誰が誰だか途中でわからなくなってしまうので、
「あらかじめ犯人だけでも把握しておかねば!」
というので小説を読んでいったんです(倒錯)
アガサ・クリスティはやっぱり読みやすくて面白いですね。
「よし、アイツがアイツを殺すのを見に行くぞっ」
と勢い込んで映画館に向かいましたら、登場人物の属性やら性質やらを微妙に取り替えたり、変更したりしてるので、かえって混乱してしまいまして、
「えっと、この人が原作のあの人で……」
っていうのを必死に追いながら見ていたら、疲れたんでしょうね、三人目を殺した銃声でハッと目を覚ました次第です。
おかげで誰が犯人かだけは知ってるが、それ以外の推理の大事なヒントみたいなのはほぼ全部見逃したという結果になりました。
……いや、面白かったんですよ。
ジャクリーンという中産階級の女の子が自分のぼんくら婚約者を大富豪の友人リネットに紹介したら、横取りされてさあ大変、というのが事の起こりなんですが、
初対面のはずのぼんくら婚約者と大富豪リネットが、会った直後にいきなり前戯みたいな濃厚なダンスをするのが
「君たち明らかに初対面じゃないよね」
っていう感じでびっくりしました。
原作と全然違ってぼんくら婚約者と大富豪リネットが組んでジャクリーンを騙してた話にでもなるのかと不安になるレベルのあのおもしろダンスはなんだったのだろうか。
あと、事件が起こるシーンにほとんど寝ていてこんなことを言うのもなんだけどせっかく現場がナイルなのでもうちょっとナイル感ほしかったなあ、というのは正直なところです。
TVシリーズの『ナイルに死す』も見たのですが、こちらは帝国主義的空気感色濃いイギリスの金持ちたちが「未知の土地エジプト」に勝手に抱いたオリエンタリズムの夢がふんだんに描かれていて、それはやっぱり非常に魅力的なんです。
わざわざ今リメイクするのだからそのへんはなんらかの工夫を入れつつもアガサ・クリスティが書き込んだナイルらしさの魅力は出してくるのであろうと期待したのですが、観光映画的要素は予想よりだいぶあっさりしていたのはちょっと残念。
まあでも「美人で金持ちなんてずるい」とか「金持ちなんてどうせ性格悪いでしょ」「今にバチが当たればいいさ」とか、そういう劣情を上手にくすぐられるのは楽しいですね。
あと、新婚旅行のゆく先々で勝手に待ってる女友達って普通に超かわいいと思うんだけど、だめなんだろうか。
別に危害は加えないし、ちゃんと衣装とか用意してきて健気だし、懐いてる感がたまらないような気がするけどなあ。