Netflixなどで順次配信中の超ハマっているアニメ『平家物語』がついに、源氏に追われて西に向かう船に乗ってしまったのが寂しい限りです。
あとはもう悲しいことしかないではないか。
ずいぶんハマっていて原作としてクレジットされている古川日出男訳の平家物語を夜な夜な読んだりしながら見ています。
平家物語を普通に読めば、だいたいの人が清盛の子孫たちの中で、ほぼ唯一「かなりちゃんとした人」だった重盛を好きになるようにできてるとは思うのですが、
またこのアニメ版の重盛という人は富に好きにならずにいられません。
共感性深いゆえに傷つきやすく、二代目らしいコンプレックスも抱えており、雅なところもありながら武士としても優秀で、いざとなれば腹も座っている、しかしどうしたわけか気弱で地味という、しみじみと親しみを感じずにはいられないタイプ。
最近見たアニメの登場人物の中で最大級の推しメンと言えます。
そんなにかっこいいのにどうして若死にしてしまうんだ重盛。
滅びの物語であり、それを目撃している幼い琵琶法師の物語でもあります。
平家に尽きせぬ恨みがあるはずの少女びわが、拾われた平家の屋敷で、美しかったり楽しかったりする瞬間もたくさんある日常を共有し、滅びまでの運命をつぶさに見ます。
歴史という文脈にのっとれば「清盛の息子」「清盛の孫」という意味では、どいつもこいつも使い物にならなかった、というような話にはなりましょうが、当然孫たちも息子たちも、いいところも悪いところもいっぱいある普通の人達で、決して滅びてほしくない大切な日常を積み重ねて暮らしています。
それを見ていくにつれ、いくら冒頭でびわの父親が理不尽な平家の暴力によってひどい殺され方をしたのであったとしても、その滅亡に「ざまあみろ」という気持ちには、なかなかならない。
その単純ならざるモヤモヤが、たいへんな軽やかさで描かれており、本当にひきつけられます。
また素晴らしいのがオープニングテーマです。
何度も聞くうちにこの「光るとき」という歌も好きになってくるのですが、その歌詞の中にこんな一節があります。
何回だって言うよ 世界は美しいよ
君がそれを諦めないからだよ
この「諦めないからだよ」の「からだよ」のところで、
アニメーションの中の後白河法皇がそのリズムに合わせて袖を振っておどってるように見えるシーンがまたやたら好きなんです。
法皇だって源氏と平氏の板挟みになるやら、幽閉されるやら、色々苦労はした人ですが、オープニング映像の中で
「なんだ、超ルンルンじゃん、法皇!」
ってなってるのが、私は本当に嬉しくって。
ルンルン法皇のためだけにこの映像を何回も見たりします。
未来がどうあっても美しくて楽しい日常を過ごすというのは、本当に大切なこと。