私には縁がないと思っていたデンタルフロスです。
子どものころはなかったのですよ、こんな糸。
「歯磨きのあとにフロスしたほうがいいよ」
なんて言われる機会もないまま大人になってしまって、そうするともう「フロスの習慣は大事」なんて情報を後から小耳に挟んでも
「鏡に向かって糸で歯間をせせるなんてみすぼらしい真似できるかっ!」
と反応する偏屈な人になっている。
人間、成人後は9割偏見で物事を判断してるもんですいません。
とはいえ、歯間の衛生面は気になるので結構長い間ジェットドルツを愛用はしており、これはこれでとてもいいものでした(冷静に考えるとフロスが嫌でジェットドルツなら良い、という理由もよくわからないんですが)
それでも惜しいことに住宅事情が変わって手狭になった洗面所に設置できなくなり、何か考えないといかんな、と思ったまましばらく時ばかり経っていたのであります。
たまたまデンタルフロスを習慣的に使ってる人の話を聞いていて
「フロスで血が出る人はもう歯周病なんだから、むしろ使え。血がでなくなるまで使え」
というスパルタ推進論を聞いていてちょっと楽しくなってきたのです。
歯周病ではない自信だけはあったので
「たかだか数百円のものだし、そういう挑戦なら受けて立とう」
と好奇心を起こしたのでした。
買いに行った店頭でようやく思い出したのですが、フロスにあまりいい印象がなかった理由のひとつが、そもそも私は歯間が狭くてこういうものが入りにくい、ということがあったのです。
ところが、改めてじっくり売り場を見ると、たくさんの種類が出ており、細め繊維にワックスが塗布された歯間が狭い人向けのものまでちゃんとあるではないですか。
とりあえず「初心者向け」と書いてあるものを選んで帰ります。
ぴーっと長めに30センチくらい引き出して切り、片方の端をくるくる指に絡めていざ。
思っていたよりちゃんと入りました。
考えてみれば数年前に親知らずを一本抜いてから、昔に比べると歯の方でも暮らしにゆとりができているんでありましょう。
ぎこちない感じで一本ずつ、歯茎は健康であるという謎の自信を胸に対峙していきます。
一本終わったらフロスを指に巻き直して、新しいところを使って隣の歯。
「余裕余裕、これはおもしろいぞ」
と思っていたところで突如、ドン引きするほどどくどくと血が出てきた箇所があって動揺します。
「いやいや、そんなはずはない。これはきっと違うやつだ」
意味不明の独り言を言いながら見て見ぬふり。
それでも終わればすっきり爽快、ちょっと血は出ているけれど、これはいいもんだ!
むしろ今後はフロスをしない限りは歯磨きした気がしなくなるんじゃないかというくらいのすっきり感でした。
異様な出血をみた部分は二回目からは全然出なくなり、一回で治る歯周病なんてあるもんかなと不思議な気もしますが、なにか悪いものを一回でやっつけたっぽい気分が盛り上がるので、娯楽としてはちょっと血が出たほうが楽しい。
大人になればなるほど自分をケアする時間は大目に取るようにしていく必要があるもんですし、こういうことを初めてみるのは実にいいことだと思ったのでありました。
ちなみにサンスターのサイトによると、歯石除去率はフロスより歯間ブラシのほうがちょっと高い、みたいなことが書いてありす。
なるほどとは思ったものの、ただでさえ細々したものが増えがちな洗面台に使い捨てプラスティック製の小さいブラシがバラバラあるのはちょっとなあ、という気もします。
それを考えると、「シーシーハーハーおっさん臭い」というのでほぼ絶滅に瀕している「爪楊枝」という文化は実はかなり最先端だったんではないか、などとも思われてきます。
歯石除去率、「フロス」と「歯間ブラシ」のほかに「爪楊枝」も入れて検証してみてもらえないものか。人前で使わなきゃいいだけなんだからさ。