晴天の霹靂

びっくりしました

スーパー猫の日、吹雪の夜

2022年の2月22日が「スーパー猫の日」なのだそうで、ああそうそう、もちろん誰かがそんなこと言い出すと思っておりましたとも。

私が言うのもなんだが、みんなちょっと猫が好きすぎなのではないか。

なにかと言えばすぐに猫に癒やしを求めてばかりいると、そのうち猫に人類社会をのっとられる日が来ますよ、と思ったりするが、想像してみるとわりとやぶさかではない。

我が家はすでに乗っ取られてるし。

 

さて寝ようか、とパソコンの電源を落とした私を待ちかねて部屋の敷居のところから猫がランランと目を輝かせてこちらを見ている。

黒い顔の中でひときわ光る瞳孔の開きっぷりが可愛くて、ちょっとサービスする気にもなるのだ。

猫の顔をみつめながらそーっと四つん這いになってヒタ、ヒタ、ヒタと近づいていく。

猫の方は「お、なんだ?なんだ?やるのか?」と全身これ好奇心となって見つめ返してくる。

ヒタ、ヒタ、ヒタ。

さてもう手を伸ばせば捕まえられるぞ、という距離まで近づいてから急に「にゃーっ」と声を上げると、黒猫は一目散にどこぞへと走って消えた。

「ふっふっふっ、安直な生き物め、猫の相手などちょろいものだ」

と思って立ち上がった瞬間、「うっ」と今度は素のうめき声が出た。

吸った瞬間に肋骨と肋骨の間に鋭い差し込みがあって一瞬呼吸が止まる、しゃっくりくらいの頻度でたまに起こる神経痛的なアレだ。

肋間の差し込みちょっと久しぶりだな、と思いながら身体を伸ばしたらまた「うっ」となる。

「うっ。なんか身体伸ばすと肋骨が痛い。ちょっとマロちゃーん?うふふふふ。うっ。なんか、マロ、ちょっと。うふふ、ちょっと。笑うと痛い。うふふふふ」

夜中に猫の真似をしていたらよくわからないところが痛くなってしまったことがおかしくて、笑うとまた差し込んで痛いのでうっとなる。

それを、遊びの続きだと思って部屋の暗がりから目を光らせて凝視している黒猫の顔がまたおかしくて、もはやどうやっても収集がつかない。

「いひひひ、うっ、マロちゃん、今日はもうおしまい。寝よう寝よう。ひっ」

こんな場所がこんな具合に連続的に痛いのは初めてのことだが、数秒間四つん這いになってる間に肋骨の間を捻挫する人類っているんだろうか。

歳を取るって想像以上にファンタスティックなことである。

 

ひいひい言いながら布団を敷けば、ひいひい言ってるのに遠慮会釈なく猫は身体に載ってくる。

窓の外がたいそうな吹雪なので、どうやら風を怖がっている気配。

責めるわけにはゆくまいよ。

ファンタスティック人類とスーパーキャットが、今夜もいたわりあって仲良く眠る(肋骨は起きたら治ってた)