北国の1月とは思えないくらいの湿った重い雪が連日降って、朝な夕な雪かきばかりしている。
冬の帽子が毛糸でできている理由は、雪とは本来冷たい結晶で、払い落とせば濡れないからだ。
それがこの節降る雪は落ちるそばから濡れるから、雪かきの合間に乾く間もなく、編んだばかりのニット帽が二枚とも濡れてぶら下がっている。
降った雪を右から左へ、左から右へやるために、湿った帽子で吹雪の中へ。
さっきの雪かきのあとは、もうすっかり雪の下に埋もれて、
「こんなことなら最初からやらなくても同じだったのだ」
という脱力を持って迫ってくる。
なぜ、雪かきをした道としなかった道に、同じ高さで雪が積もるのか、物理法則を強く空に問う。
顔を上げれば駐車場では、みんな揃いも揃って暗黒色のジャケットなど着て、深夜の除雪車が来る前に急ぎ雪出しをしている。
雪がふりつける中、全員頑固に下だけを見て、こんもりした小山の中から自分の車を掘り出すことに余念がない。
こんばんは。
はい、こんばんは。
こんな重たい雪は困ったもんですねえ。
ええ、本当に嫌ですねえ。
そんなことを言いあう人はもちろん居なく、みんな早めに帰って寝たい。
「雪の降る日の空は巨大なレフ板に街の灯りを反射して、それは素敵なオレンジ色に見えますね」
私ももちろん誰にもそんなことは言わないが、しかし地続きの巨大な孤独の中に等しく不毛の穴を掘り進めている感じはわりと愛しくもある。
こんな夜も悪くない。
吹雪、吹雪、氷の世界。