晴天の霹靂

びっくりしました

アスリートじゃなくてもみんな頑張って生きているのだ

【本日の巷】

記録的な猛暑とやらで、今日も大変暑いのです。

ただでさえ混んでいる夕方のスーパーで、みんないい加減うんざりしているレジの行列に並んでいたときの事です。

閉まっていたレジに、店員さんがやってきてあけてくれました。

「次のお客様どうぞ」

みんなの期待を一身に浴びてやってきたその女性は見るからに手練で「この人の仕事は早いぞ」の感じがビシビシと伝わってきます。

よろこんで列に加わる私。

感謝と激励の意図をこめて、胸元の名札をぱっと見ると、なんと名前が「加勢」ではないですか。

きっとその場のみんなが思った。

加勢さんが加勢にきてくれた!

 

 

【本日のオリンピック】

なんだかんだ言いながら着々と日程は進んでいるのか、と感心したことには今日のハイライトが「TOKYO2020前半戦ハイライト」になっていたことですね。

そうか、半分終わったことになるのか。

 

12分くらいあるハイライト動画で、「こういうもんなのかな」と思ったのは日本人選手しか映っていないこと。

メダリストであっても日本人選手しか映っていないし、予選落ちでも著名な日本人選手であれば映っている。

私がスポーツを見慣れていないからの違和感なのかもしれないが、

「国際試合というのは世界クラスのトッププレイを見られて楽しいよね、という祭典ではないのか?」

とは思った。

ハイライト動画しか見ないなら仕方ないだろうと言われれば、まあそうかもしれないが、たった12分だからこそ、予選敗退となった体操選手のミスシーンが入っていて、その後の「土下座したい」というインタビューシーンまで入っているのはいかなることか。

他にもっとみるべき、紹介されるべきドラマがいくらもあったんじゃないだろうか。

 

スポーツ界のニュースを思い出せば、記憶にあたらしいところで大阪なおみさんの「試合後のインタビューにはアスリートへのメンタルヘルスへの配慮がまったくない」という抗議行動があった。

大会主催者が最終的にそれを受け入れたという流れがあって、その件については日本でも大きく取り上げられていてみんな知ってる。

その文脈を踏まえての五輪出場で、開会式の聖火リレーの最終ランナーを彼女が努めたのもたぶんみんな知ってる。

その大会で、予選敗退直後の選手への囲み取材があったのも妙なもんだし、そこが「ハイライトシーン」です、って言われるのも「今まで人の話聞いてた?」くらいのことは思ってしまう。

 

正直、スポーツってたぶん「残虐ショー」の側面も多分にあって、一生をかけて勝負の舞台に到達した選手が、敗北し、屈辱にまみれてもなお礼節を守って人前に立っていなければならない姿にこそスポーツマンシップを見る、という面は往々にしてあるんだろう。

でも「アスリートのメンタルヘルスをもっと考慮すべきだ」と主張している選手を象徴として選んでアピールした大会なら、もっとそのための努力みたいなことは考えられないと、本当にバカみたいじゃないだろうか。

 

ついでに、ハイライト動画の競技の中からできるだけ素朴な感想をひとつ上げておくと、男子団体フェンシングがちょっとした衝撃だった。

メダルが決まった直後、試合終わったばかりの選手にチーム全員がワラワラ駆け寄ってきて即座に抱き合うではないか。

その、手に持ってる剣みたいなやつは、何か触ると危ないものじゃなかったのか!

 

【本日のオリンピック読書】

2011年までIOC委員だった著者によるIOCの組織の紹介本。

あんまりな無茶振り具合に短期間ですっかり有名になったものの、それにしても実態のつかみにくい組織IOCである。

 

「王族、貴族出身者、学者、教養人、富裕層」が多い、と文中にも書かれてるとおり、そもそも感覚が違いすぎて今ひとつよくわからない。

実際、著者は元オリンピック選手だが、著者の前任の日本人IOC委員は元皇族の竹田 恆 徳さんだし、30年つとめた著者が引退したあとは息子の竹田 恆 和ということで、元皇族の間で世襲する間のジョイントのような形になっている。

 

「王族と貴族と金持ちばかり集まって世界中で税金を吸い上げる大商業イベントをたくらむ組織がある」というふうに言われると

「また、へんな陰謀論にひっかかっちゃって」

と思うところだけど、IOCは本当にあるんだから、今の時代、話はややこしい。

 

特に「ああ、やっぱりだいぶ意識がちがうなあ」と思ったくだり。

その サマランチ 会長 が 同じ 年 に 来日 する こと に なっ た。 私 が IOC 委員 に なっ て 初めて 迎える 会長 の 来訪 に、 日ごろ 自分 が 諸 外国 で 受け て いる のと 同じ よう な 待遇 で 迎え たい と 思い、 JOC に 出向い た。 「まずは、 移動 に際して 先導 の パトカー を つける こと。 天皇陛下 に 拝謁 し たり、 中曽根康弘 首相 に お目にかかっ たり する 際、 約束 の 時間 に 遅れ ては なら ない。 また、 成田空港 では 外交 特使 並 に 搭乗 口 までの お迎え を する よう お願い し たい」   そう 言っ た とたん、 JOC は、「 そんな 無理 な こと、 頼ま れ てもで きっ こ ない。 猪谷 さん、 自分 で やっ てよ」 「どうして 他 の 国 の NOC では やっ て くれ て いる こと が、 日本 では でき ない の」 「いや、 でき ない もの は でき ない」   どうも 面倒 な 話 に なる と、 JOC は やっ て みよ う とも し ない で 初め から「 でき ない」 と 匙 を なげ て しまう。 仕方 が ない ので、 自分 で 各方面 に あたっ て み た。 する と、 本来 なら 国賓 級 の 人 にしか つか ない パトカー を サマランチ 会長 に つけ て くれ た。   日本 という のは 不思議 な 国 で、 組織 が アプローチ し ても 難しい が、 個人 が 頼む と 通る こと が しばしば ある。 個人 の 場合 は 前例 に なら ない という 理由 の よう だ。 私 は その後 も、「 個人」 として、 この 種 の 許可 を もらう こと が 少なく なかっ た。   余談 ながら、 オリンピック を 招致 する とき など、 こうした 接遇 が できる よう に し て おか ない と、 それ だけで 印象 を 悪く する こと も ある。 東京 への 招致 合戦 を 控え た 現在、 これ は ぜひ、 頭 に 入れ て おか ね ば なら ない。   成田 に 着い た サマランチ 会長 を パトカー に 先導 さ れ た 車 で、 高輪 の ホテル に チェックイン さ せる と、 それから 分 刻み の スケジュール で 動い た。 陛下 を はじめ、 首相 に 文部大臣、 オリンピック の スポンサー に なっ て い た 富士フイルム電通、 そして 各界 の 要人 に 会わ せる ため に、 三 日間 の 日程 を フル に 使っ た。

猪谷 千春. IOC―オリンピックを動かす巨大組織― (Kindle の位置No.756-772). 新潮社. Kindle 版.

 

これは「できない」と言って頑張ったJOCのほうに理があるじゃないか、と私は思うのだ。

都市主催のイベントに国賓級の待遇をつけられないのは別におかしくないだろうし、国賓級の待遇が必要なら国賓として招待できるように手続きを踏めばいいだろうし、それが通らないのなら日本にはオリンピックはいらない、ということなんじゃないだろうか。

個人として各方面にあたったらできちゃった、ということのほうがおかしかないか。

と、戦後民主主義教育を受けたところの平民である私は思ったことだ。

 

過去の話を時代をさかのぼった価値観で判断できないという面は多々あろうけど、この「オリンピックが通れば道理が引っ込む」感じはそのまま2021年まで続いていって、ついに破綻をきたしたんじゃないかなあという気はした。