ことしは丸粒麦茶を飲んでいます。大変うまいです。
色々試した結果「1.4リットル入る耐熱ガラスのポットにパックを入れて熱湯をそそぎ、4時間くらいで取り出して冷蔵庫に入れる」という淹れ方に落ち着きました。
しかし、ここに些細かつ重大な問題に直面するのです。
私が使っているハリオの耐熱ガラスのポットです。
冷蔵庫のドアポケットにしっかり収まるサイズで、使い勝手は快適。
しかし、高さが28センチあります。
うちの菜箸も長さが28センチなのです。
底に沈んでいる麦茶パックを取り出したくても、菜箸は全くとどかない。
いかにして底に沈んでいる麦茶パックを取り出すべきか?
いろんなことを考えました。
麦茶パック専用に孫の手を買えばいいのではないか、というのも私にしちゃ悪くない案だったように思います。
しかし「考えてみれば孫の手ってどこに買いに行ったらいいのかよくわからないよな」などと思いながら菜箸片手に苦労を重ねるうちに、さらにすごいことに気付いたのです。
菜箸で、ポットの上の方の麦茶をぐるぐるかき混ぜて渦を作るのです。
すると、あら不思議。
底に沈んでいた麦茶パックがゆらーっと浮いてくるではないですか。
ポットの半分くらいの高さまでゆらゆら浮いて来てくれれば、もう菜箸は届きますから、孫の手を買うまでもなくこの問題がクリアできるのです。
お湯出し派のみならず、不精だけの理由で最後までパックをいれっぱなしにしてる水出し派の人も、この方法を使えば簡単に取り出せるではないか。
抽出時間の好みは人それぞれとはいえ、必要以上に長時間入れておかないほうがやっぱり麦茶は美味しいのです。
それで、最後は理屈ですよ。
どうして、上の方で渦を作ると底にある麦茶パックが浮いてくるのか。
「理由まで説明できたほうがかっこいいだろう!」
と思って子供向けの流体力学の本とか読んでみたりしましたが、子供向けとはいえ数式を避けて通れなかったため、わりと早々に撤退。
そんな中、一番近い現象ではないかと思ったのがこれでした。
上の方で渦を作ると外向きの遠心力が発生する。
その外へ向かうための水は下の方から中心を通って供給される。
よって、下に沈んでいる物質が水流に乗って浮いて来る。
ティッシュペーパーでの実験くらいだと、なんとなく
「ふーん、そんなものかな」
と思ってぼんやり見てしまいますが、しっかり水を吸うと90グラムにもなる重たい丸粒麦茶パックが途中までとはいえちゃんと浮いてくるってのは、なかなか感動的なもんです。
あるいは麦茶パックの「そろそろ出たいね」という呼吸と、私の「そろそろ出したいな」という呼吸がぴったり合った瞬間になんらかの浮力が生じる、というファンシーな理論を採用するのも魅力的ではありますが、
再現性の話をするとSTAP細胞みたいになってしまいそうなので諦めました。
ところで、ただいま開催中のハヤカワ書房の電子書籍半額セールのおかげで最近読んでる面白いSF(?)
時間旅行を楽しんでるうちにタイムマシンが壊れてもとの時代に帰って来られなくなった人のために、旅行会社が用意してあるマニュアルです。
特別の訓練を受けてない人が自力で科学文明を作るための方法が初歩から詳しく書いてある。
『サピエンス全史』の娯楽版のようであり、『ロビンソークルーソー』の科学版のようであり、今まで読んだことないタイプの妙にわくわくする読み物でした。
その中にこんなふうに書いてあります。
じ つ の ところ 科学 とは 単に、
1. 間に合わ せ で あり、
2. 偶発 的 で あり、
3. 私 たち が これ までに やっ た 最善 の こと
に過ぎないのです。ライアン ノース. ゼロからつくる科学文明 タイムトラベラーのためのサバイバルガイド (Kindle の位置No.560-561). 株式会社 早川書房. Kindle 版.
そういうことなら自信を持って我が家にもパンクな科学文明を構築していくとしよう。