晴天の霹靂

びっくりしました

幻想の安寧が崩壊する夜と、突っ張り棒が落ちない君。

人生にはしばしば、突っ張り棒が落ちる夜がある。
落ちたのちの惨状を目の当たりにしてはじめて人は、この空間はギリギリの力学バランスで持ちこたえていたあって、昨日まで落ちずにいたことがむしろ奇跡であったということを知る。
生活とは、たえずどこかに負荷をかけつづけることで辛くも維持されている幻想の安寧でしかない。

 

だがしかし、今は、そんな話をしたいのではない。
数日前に突っ張り棒が落ちたのだ。
うちには、押し入れに居座って時を知らずひとりゴロゴロ言うのが好きな猫がいる。

ゆえに、押入れの突っ張り棒を「いつ落ちるともしれない状態」にしておくわけにはいかないのだ。
できれば突っ張り棒の両端に、なにかしら滑り止めになるような金具をつけて補強したいところである。
しかし傷をつけることがはばかられる賃貸暮らしであることに加えて、押入れの壁面はへなへなのベニア板だったりすることも考え合わせると、補強というも案外難しい問題である。

 

はてどうしようがあるかしら、と思って「突っ張り棒 落ちない」などと漫然たる検索をしてみるとズバリ「突っ張り棒が落ちない君」がヒットした。

何の叙情も感じない見事な名前だ。

プラスチックのぺらぺらしたものをホッチキスの細い針でガンガン壁に固定していってその上から突っ張り棒を突っ張るだけという、馬鹿みたいに単純なアイディア。

しかし、実際取り付けてみると穴が残ることを心配することなくどこにでも設置できるし、ホチキスとは思えない十分な安定感もあって感動した。

馬齢を重ねゆくばかりで、今までどうして自力でこういうことを思いつかなかったものか。
貧乏くさいといえなくもないが、こういう重箱の隅をつつくようなナイスなことを考えてくれる人は本当にありがたい。
これから先、わたしの人生には、突っ張り棒が突然落ちる夜などもうこないと思うと、ちょっとした恋愛感情まで湧くのである。


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お題「#新生活が捗る逸品」