晴天の霹靂

上品な歩き方とかを習得できないまま人生を折り返すとは

4月のムラサキッカス

今日から4月になったことを正確に知っているのかしら、と思うくらいの勢いで、いきなり一斉に道端のクロッカスが咲いた。

昨日まで何もなかったはずのところがあまり見事にクロッカス畑になっているので

「ああ、クロッカス」

と思わず声に出すと

「なになに、クロッカスってどれ」

と隣を歩いていた知人が聞く。

 

そうか花に興味がない人はクロッカスもしらないものか、と思いつつ

「あそこにたくさん咲いてるじゃん」

と指をさす。

「何色のがクロッカス?」

 

たしかに紫やら白やら黄色やら、色とりどり咲いてはいるが、

いくら花に興味がなくても普通に見れば「全部同じ花だ」くらいの識別はつくものではないだろうか。

はたしてこれは本気で聞かれている質問であるか、と考え込んでいると、

間の悪いことに、今日はエイプリルフールであることを突如思い出して悪ノリを我慢できなくなってしまうのだ。

 

花畑を順に指差して説明する

「あれがムラサキッカス。これがキイロッカス。あっちはシロッカス」

「クロッカスは?」

「うーんと、これ」

と、いくつか紛れ込んで咲いている福寿草を指す。

「黒くないじゃん」

「最初は黒いんだけど、満開になると色が変わる」

「ふーん」

「……」

 

フォローとか弁解とか訂正とかしにくい雰囲気になってそのまま通り過ぎてしまったが、果たしてこの一件はこのまま一生放置しておいて大丈夫な案件だったであろうか。

花をまじまじと見たことがない人はクロッカスと福寿草が別の花だという区別もつかない、なんてこと、あるかしら。

この場合、4月早々騙されているのは、私なのか知人なのか、どっちだったんだ。