晴天の霹靂

びっくりしました

『クララとお日さま』~世界についてなにか大事なことを知らされてないかもしれない不安

わたくし、kindleを持っているのですが、 3月2日は朝から電源いれるたびに

カズオイシグロの新作出たよ?買わないの?今日、世界同時発売日だよ」

と言いに来るんですよね。

「いや、他に読まなきゃいけないものいっぱいあるし、まだいいよ」

と思ったんですが、困ったことにうっかり眼に入った装丁が好みでした。

クララとお日さま

クララとお日さま

 

 よく考えたらどうせ電気書籍なのでどんな装丁だろうとほとんど関係ないうえに、私の持ってるkindleはモノクロ画面なので、ジャケ買いするメリットも全然ないんですが

「あれ?ちょっといいね」

なんて思ってしまいまして。つい。

Kindleってものすごく便利ですけどこういうときに怖いものです。ついうっかり買う値段じゃないだろう2.600円。

 

衝動的に買わされてしまった値段については未だにちょっと根にもっているものの、非常に面白く読みました。

語り手があまりにも表裏のない率直な善意を持つがゆえに、読んでいて

「あれ、この人が世界について持ってる情報にはものすごく欠けたところがあるんだじゃないかな?」

という不安にだんだん取り巻かれてしまうところ。

でも語り手がどこまでも率直に乗り切ろうするのに共感を深めるごとに、その欠落ある世界の側に「よりよくあってほしい」としらずしらず希望を持ってしまうところなど、『わたしをはなさないで』を思い出します。

「うっかりノセられて買った感」については内心忸怩たる思いもあるが、最後まで非常におもしろかったです。

 

 

 

 「誰が何の権利があって決めたのかしらないがオリジナル人類(?)に奉仕させられる運命の子ども」という関連でずっと脳裏をよぎり続ける過去作。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

 

 最初に読んだときは、あまりにも主人公が気の毒なので、脳が理解を拒絶した挙げ句「これってありがちなSFなんじゃないかな?」と思ったりしました。エミリ先生の同性愛関係に気づいてからは、もうちょっと色々気をつけて読めるようになり、いまや非常に好きな小説であります。