晴天の霹靂

びっくりしました

うるう年の説明までは丁寧なのに、節分がずれる話になると急にみんなお茶を濁しているようだ

惣菜屋さんの前に、ここ一年くらいめったに見かけなくなったレベルの大行列ができていたのを、ナニゴトデアルカと観察したら、海苔巻きが山と積まれていた。

そうそう、節分節分。恵方巻恵方巻

 

コロナ禍のおかげでたださえ季節感やら時間の感覚やら狂いがちなところに、2月2日節分、百ナン年ぶり!などと言われても本当に藪から棒な感じがするものだが、

「そうは言っても夕食を作る手間を省く言い訳にもなることだし、海苔巻くらいは食べておくか」

と辛抱強く並ぶタイプの人がこんなにたくさんいるのは小売業界的にはそれなりにめでたいことであろうか。

十年くらい前には流行っていた「あんな習慣、ワシの子どもの頃にはなかったぞ!」という年齢マウンティングも、さすがに近頃下火になってきたと観測される。

 

つまりは、春が来るということか。

花屋さんを覗くと黄色い花がとても魅力的に目にとまる。

春の花は黄色だと思っているのはおそらく菜の花畑からの連想なのだけど、私の住む北海道にはない花だ。

雪国で春を告げる花といえば、クロッカスやらこぶしやらだし、だいたいこの時期はまだ世界は雪の中で、植物の命の気配はまったくない。

花屋さんで黄色に目をとめて「ああ、春だなあ」と思うのは、おそらくカレンダーやらどこかのニュース映像やらで作られた遠くの誰かの季節なのだが、それでも不思議なことに心の中ではずむものはやっぱりこの私の季節感なのだ。

 

去年の暮れから活けてある南天も、そろそろ春の花に変えよう。

そう思って、ちょうちょみたいに黄色くひらひらしたカーネーションを買って帰る。

2月の気候に溶けたり凍ったり溶けたり凍ったりを繰り返す灰色の雪道を、黄色い花を抱えて歩く。

素敵な春の花を持ったまま抜けるような青空を全身で仰いで、漫画みたいにスローモーションですべって転ぶ。鬼は外。

 

今週のお題「鬼」