やたらと蒸しパンを作っている。
ことの起こりはシナモンティーだ。
KALDIのシナモンティーが好きで日々よく飲んでいるのだが、これは茶葉が入っているわけではないので渋くなることもなく二煎目以降もお湯を継ぎ足しながら結構行ける。
行けるとはいえ、だんだん薄くはなる。
「捨てるのが惜しいほどまだ味は出るが、インパクトがちょっと弱い」
くらいの状態になったティーパックをどうするか。
そこで私は思いついた。
スーパーのスパイスコーナーに売っているシナモンパウダーの小瓶を買ってきて、ちょっとずつ足しながら飲めばよいのではないか。
思いついたまではまあ、悪くなった。
飲んだ感じもまあ、悪くなかった。
「これはダメだな」と思ったのは飲み終わったあとだ。
溶けるものではないのでカップのふちびっしりにパウダーがついてカピカピと乾いており、洗うのも面倒くさいし、なんとなくテンションの下がる見た目になるのである。
ここにお湯を継ぎ足しながら飲んでいると、なんとなくあまり衛生的でないようなことをしているような気分になってきそうでよろしくない。
そんなわけでお茶にはバニラオイルやアーモンドオイルなど液体の香料を足して飲むことにして、追いシナモンパウダーは諦めた。
そこで、である。
一方その頃お茶に入れないことに決定したシナモンの行方をどうするか。
このまま放っておくとどんどん香りが飛んでいくに違いない、まだほとんど使っていない小瓶である。
オーブンも何もない我が家にとっては、何か焼き菓子でも作ると言っても蒸しパンが精一杯であろう。
小麦粉、ベーキングパウダー、卵と、砂糖と、サラダ油と、牛乳とシナモンパウダー。家にあるものだけをきわめていい加減に混ぜ合わせ、お弁当に使う使い捨てのアルミカップに注いで、フライパンに並べて、少量お湯をさして蓋をして13分蒸気で蒸す。
いくらなんでも今どき素朴にすぎると思いつつ、ひとつアルミカップをむしり、手で割って食べていると、これがまたなんだか知らぬが後をひく。
ひとつ、ひとつ、と手を伸ばしているうちにあっという間に食べてしまった。
「……なくなったし、シナモンはまだほとんどひと瓶あるんだからもう一回作っておくか」
制作の手間も少ないのをいいことに、食べ終わったら作り、作ったら食べ。
どう考えてもわざわざ「美味しい!」って言うほどのものじゃないような気がするけど、なんかうっかり美味しいなこれ。
戸惑いをいだきつつ、ある日偶然はじまった蒸しパンの日々である。
正直それほど美味そうにも見えないビジュアルが、またえらくちょうどいいのだ。
断固としてインスタ映えないハードルの低さが中年のアンニュイをそそる。
ベースのレシピ。バニラの代わりにシナモンをいれて、あとは適当。