新年からNHKで『100分de萩尾望都』を放送していたのが、まあ最高に面白かったです。
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一番好きな萩尾望都作品って何かなあ、『イグアナの娘』かなあ、『半神』かなあ、『トーマの心臓』かなあ、などと考えていてらぜんぶ取り上げてくれていて目からお屠蘇が流れ出る思い。
『イグアナの娘』って、イグアナのリカちゃんが、牛の男子と結婚してやっと穏やかな生活を手に入れるのが面白いと思って読んでいました。
色んな呪縛がかかってるからどうしても他人に変な応対をしてしまいがちで、だから自分には人と親密な関係を築くのは無理だろう、まあそれで仕方ないかと生きていたら、大学に入ったところでどうも変な動物がいっぱい居る(大学が動物だらけってのは本当にリアルな表現力!)。
この調子ならイグアナとして生きていくのもまあいいのかな、なんて暮らしてたら、やがてちょっとやそっとのことではビクともしない牛がどーんと現れる。
「この牛なら自分が噛み付いちゃったりしてもまったく気にしない。これなら大丈夫だ」
と、やっとリラックスして生きられるようになるのが、読んでいてとても嬉しい。
「いやあ、あの牛は良い牛だったなあ」
なんて、折々急に思い出すレベルの、ベストオブ牛でした。
『100分de名著』を見て久しぶりに読み返したら、記憶からこぼれおちていたのに気づいたことには、この話、母が亡くなる話しだったのです。
牛と穏やかに暮らしていたイグアナのリカちゃんは、母の死の知らせをきいてホッとします。
リカちゃんをイグアナにしていた呪縛は母の死をもって解けたので、女性の魂の自律の物語としてはハッピーエンドとも言えるのだけど、それがほかならぬ肉親の死によってしか達成されないものなら、一人だけ呪縛を解いちゃった方としては「ごめんなさい許してください」という感情を持たざるを得ない。
自分は勝手に解放されたものの、自分が母だったかもしれず、母が自分だったのかもしれない、そのもう一方の魂は、応答のない人生をどう思いながら死んだのか。
死を想う機会のとても多かった2020年を経て、今読むとこの不可抗力の生命の循環は、全然すっきりはしないが大変慰めにはなる、やっぱり偉大な名作なのでした。
それから耽美的な『トーマの心臓』もうっかり読み返したらもう止まらなくて大変。
このコマのオスカーの姿ですよ。
こうして改めて読み返すと、どう考えてもこれだし、
これではないか。
なにこれ、かっこよすぎる、なんでこんなことができるのか、と蒟蒻みたいにブルブル震えながら読んでたらかなり寝不足になりました。最高。