晴天の霹靂

びっくりしました

南部鉄器の卵焼き器来る ~小さいからこそ重くても便利

何かと物入りな年末だけど、南部鉄の卵焼き器を買った。

めちゃめちゃテンション上がる。

 そもそもフライパンって常にもやもやし続ける存在と言える。

最初はきっと間に合わせで買ったような、ホームセンターで一番安いクラスのフッ素樹脂加工のフライパンから始まったのであろう。

使っていればいつの間にか表面加工は剥げ、ある日突然猛烈に焦げ付くようになるもの。

我慢の限界に達したときに奮然と新しいのを買いに走ることとなるが、向かう場所がまたホームセンターとかスーパーの二階。

大量の表面加工のフライパンを目の当たりにし、何がなんだかわからないまま大きさだけ確認して、まあ一番安いくらいの表面加工のフライパンを買って帰る。

そしてまたある日突然に……という循環の中に入る。

 

そもそもなぜフライパンばかりやたらたくさんの種類を売ってるのだと改めて考えてみれば今日もまたどこかの家庭で表面加工が剥がれていて、みんななんとなくもやもやしながら新たなるコーティングを選んで買ってるせいと言えるだろう。

なんとなく、こういう「定期的にフライパンを捨てる」みたいな循環から抜け出したいなあ、という意識はなんとなくいつもある。

 

そんな中、ホームセンターで買った卵焼き器が猛烈に焦げつくようになった。

卵焼きだけなら油を多めにすればまだやって行けるが、私は年末には伊達巻を作るのだ。

焦げ付きやすいフライパンで伊達巻はさすがに無謀である、というので考えた。

「卵焼き器こそが表面加工のフライパンからの脱出の糸口なのではあるまいか」

なにしろ、小さいから、ちょっと重い素材でも扱える道理である。

26センチの鉄のフライパンは日常使うのが億劫になりそうなものだが、卵焼きパンくらいのサイズなら大丈夫じゃないか。

そして卵焼き器は、卵を焼く外にもちょっとした料理にすごくよく使う。

焼き物にも揚げ物にも便利なのだ。

少し癖があるかもしれぬ材質を入門的に試してみるには絶好の入り口なんではあるまいか。

 

結果、楽しい。

ものすごく楽しい。

最初に油慣らしのために多めの油で野菜くずを炒めてください、と書いてある。

キャベツがあったので芯だけくり抜いてスライスして炒めた。

あっという間に鉄板で焼く焼きそば屋さんの匂いである。

猛烈に熱された鉄板で一気に熱されたキャベツの甘く焦げる匂いとはこんなだったか。

調理器具で、こんなに匂いの立ち方まで違うとは、感激だ。

 

卵焼きについては、最近ではどこまで出汁を多く入れられるのかの実験にはまっているのだが、限界出汁含有量はむしろ表面加工の卵焼き器で焼いていたときの方が多かった。

今までと同じ水分量の卵液で鉄器で焼くと、焼き上がってから出汁が流れて出てしまったりしてるのだけど、しかしそれでも焼き上がりが前よりしっとり、ぷるっとするのでそれもちょっと驚いている。

どういう仕組かわからないが、材質でこんなに差がでるなんて単純にものすごく面白い。

 

そして「表面加工が剥がれるまでのお付き合い」みたいな割り切り方をせずに一生ついていく心づもりで使っていても受け止めてくれそうなのは、心がすっきりする。

フライパン捨てるの、あんまり好きではないのだ。

あんなに生活感の染み込んだものを、路上のゴミ置き場なんかに放置すると妖怪化する気がして仕方ないではないか。