劇場版『鬼滅の刃』がとにかくすごいことになってるというではないですか。
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『鬼滅の刃』については、どうも異様にヒットしているぞという情報を耳にはさんだころからアニメを覗いてみたり、コミックを覗いてみたり、何度か齧ってみてはいるのです。
「たいそう絵が綺麗」「デザインが海外に受けそう」「キャラクターはさすがにおもしろいな」「ストーリーは結構普通ではないか」などなど思ったものですよ。
思ったものではありますが、付いていくのは結構キツく、アニメもコミックも途中で挫折しておりました。
主人公の炭治郎君の持続しつづけるマックスの熱量に、こちらもう付いていく体力がないのです。
「まっ、また闘うんですか。またなにかそれなりの事情を持った鬼ですか。さっきの鬼とはどういうテンションの違いで受け止めたらいいんでしょうかーっ」
となってしまうのは、ひとえにこちらの感受性および体力の老化ではあります。
しかるべき年齢の時に、「少年漫画」というジャンルをほぼ浴びずに成長してきた中年たる私が、今さら急にその文化に乗り切れないとしてもその点はさほど不思議ではあるまい。
とは言え、やはり老人になって
「2020年にはコロナがあったにも関わらず劇場版鬼滅の刃がモンスター級の大ヒットで大変だったんですってね」
という話を何も知らぬ若造からふられた時に、
「そうなのよ、私もあの時劇場に居たけどみんな黙ってマスクしたまま異常な熱気で見ててそれは不思議な空間だったわよー」
というような話を誇張を交えてする権利は確保すべく、やはり行っておきたいことは行っておきたいのである。正々堂々と動機がヨコシマである。
ということで、コミックも読む進み、アマゾンプライムでアニメも見終わり、劇場版に備えてだいぶ心と体を仕上げておりました。
そんな中、いつもの美容室へ行ってきた時のこと。
懇意にしてもらっている、よくしゃべる50代の美人美容師が突然言いました。
「こないだテレビで鬼滅の刃を放送していたんですよ」
「はっ!あ、そうらしいですね」
「私、漫画もアニメも全然見たことないんですけど」
「はいはい」
「三時間全部見れちゃいまして」
「ほー、三時間もあったんですかっ」
「そうなのよ、でも全然退屈もしないで最後まで見ちゃったから、もう劇場版も見に行っちゃおうかと思ってます」
「!(心のいいねボタン連打)」
いや、あの美容師さんはとにかく素晴らしい人だと思っていたんです。
油断してるとおでこにシャワーヘッドを落としてきたり、かみそりで顎切ったり、腕はいいのに極端におっちょこちょいなところのある問題児なのですが、ああなんてことでしょう。
私よりまだだいぶ年上でありながら
「なんかテレビの特別版最後まで見られちゃったから劇場版も見てみようかな」
くらいのノリで、たいして訳もわかっていないそこそこ暑苦しいことは確かであるアニメを見にいけるだなんて、本当にすごいことじゃないか。
「行きます行きます行きます。私も行きます」
と、なぜか猛烈な勢いで美容師さんに約束をしてきたのでした。
向こうも驚いたに違いない。
何と闘っているのやらもはやよく分からないものの、劇場版『鬼滅の刃』を、なんだか徐々に観に行きつつあるところ。