晴天の霹靂

びっくりしました

夜の散歩にちゅーるを持っていくわけ

寝る前に少しばかり散歩する癖があるのだが、最近ちょっと気になることがある。

晩秋のツンと抜けたように冷えた空気の中、小走りにかけていく小柄な三毛猫を二度ほど見かけたのである。

寒さの厳しい北国の都市部、もとより野良猫はたいへん少ない地域である。

夜中に猫が勝手に出歩いている姿はそれでなくても目立つ。

 

夜目ではあるが、白い毛があくまで真っ白で汚れてなさそうなことや、極端に痩せてるようにも見えないことからすると、いかにもの野良風ではない。

しかし飼い猫であれば、この寒空に気密性の高い寒冷地住宅でわざわざ夜中に外に出すのもちょっと不自然には思える。

元来の野良ではなく、昨日今日の迷い猫だとしたら、路上で生き抜くための知識もさほどないだろう。

どんどん気温が下がり続けるこの季節にひと夜ふた夜が命にかかわらないでもない。

 

「お前、どこの子?大丈夫なの?」

遠くからそっと声をかけると少し興味を持って振り向くが、すーっと離れて行ってしまう。

「なんか困ったら私のこと探しなさいよ。また夜この辺歩いてるからねっ」

1歳前後に見える、華奢な後ろ姿に向かって声を掛ける。

 

我が家は今年の夏まで猫が二匹いたのだけど、なんだか判然としない急性の病気で突然一匹だけになってしまった。

今のところ、自分のほうから何らかの手を尽くして新しく猫を探す気はないのだけど、目の前に私じゃなければ助けられない命が現れるようなことがあれば、それはきっとあの子が帰ってきたのであろうから一緒に暮らそうと、餌皿やなんかを全部そのままに、内心こっそり待ちわびてはいる。

 

勿論、あのミケちゃんが困ってなければそれが一番いいんである。

ずいぶんと面倒見の良い優しい飼い主さんで、夜中でもどうしても出たいと言ったときにはわざわざ窓を開けて外に出してくれるような。

ひとしきり散歩して帰ってきたらまた夜中に起き出して家の中に入れてもらえるような、そんなお姫様みたいに自由に大事に育てられてるミケ子であるならそれが一番いい。

 

でもあれだ、万が一。

万が一、君が困ってるなら。

うちは君いっぴき分くらいのスペースがちょうど空いてるから、よく覚えておいて。

あんまりひどく辛い思いをしないうちに、どこかの藪の中からニャアと言ってきなさい。

とにかく、今夜は暖かく寝ているか。

 

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せめて君幸せであるか夜寒猫