晴天の霹靂

びっくりしました

マルチバースからの使者、再び来たる

また見つけてしまったのだ。

油断していると不意に私の人生に訪れ平穏な日常を破壊するマルチバースからの使者「謎のパーツ」を。

それはいったいどこから来るのか。

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きっとつい今しがたまで期待通りの役割を果たしていたがゆえに意識もされずにいた、我が宇宙の重要な構成要素だったに違いない。

しかし、ソレは何かの拍子に秩序を逸脱し、床の上に無秩序に転がってしまった。

今となってはもう、人を混乱に陥れる平和な我が家への闖入者ある。

 

拾い上げ、見つめて、考える。

「これはどこから来た何であるか」

「これがあるべき場所になくては、いつか何か困ったことが起こるに違いない」

しかし、いくら考えても分からない。

だがこれがあることによって保たれていた秩序が今危機に瀕しているに違いないという確信があるだけに、これはゴミではないのである。

私の宇宙からちょっとはずれてしまったマルチバースからの使者だ。

 

本当は、気付いている。

家の中でなんらかの不具合が起こったときに

「あっ、そういえば先日家の中で不審なパーツを拾った。この無秩序の原因はあのパーツの欠員によるに違いない」

という風に思い出すことは、確率的にいってほぼゼロに近いことを。

 

「うーん、なんだろうな」

などと言い、机の上、冷蔵庫の上、などいくつか目につく場所を点々と移動させたのち、キッチンの「いろんなものがごちゃごちゃと入っている引き出し」の中に入れることで視界から消す、意識から追いやる。

きっと、大掃除の時などにこの引き出しをひっくり返し全部を洗う時、このパーツを見ても「無秩序への不安」を思い起こすことがなくなっていれば、晴れてゴミとなって堂々と捨てられ、正式に意識からディレートされるのであろう。

その時、私の宇宙からマルチバースが一個消える。

 

マルチバースからの使者は、生活していると年にいくつか唐突に訪れる。

それはたいていどこかの引き出しなどで、いったん忘却へ向けての熟成を命じられる。

引き出しの奥のそこここにある、あの時間はなんなのだろう。

あの細かくちぎられて有耶無耶にされている人生のかけらは、本当はいったい何の時間なんだろうか。

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最近読んだ「放っておくとつい変なことを考えちゃう人達」の本。面白かった。

世間とズレちゃうのはしょうがない
 

 

 

ある朝突然自分が「秩序から逸脱した存在」になっている、というユーモア小説。好き。

変身 (角川文庫)

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