晴天の霹靂

びっくりしました

ブレンディポーションコーヒーをバニラアイスにかけて食べるのです

思い起こせば夏の始まりの頃、

「今日はアイスコーヒーが飲みたいなあ」

なんていう気候がぼちぼち始まった時期に、初めてポーションタイプのコーヒー原液を買ってみたのです。

アイスコーヒーのボトルを買って帰る重さの苦労もないし、カフェオレなどにすればそこそこおいしく飲めるのでしばらく買い置いておりました。

その後夏が本気を出し始めてアイスコーヒーの消費量も増えたあたりで、コーヒーの粉をだしパックに入れて水に漬けて冷蔵庫に8時間で抽出する、水出しコーヒーの作り置きに変更。

ポーションコーヒーの余りは、涼しくなって「毎日作り置くほどでもないけどたまには冷たいコーヒーも飲みたい」という気候になるまでとっておくために調味料棚に鎮座する運びになりました。

 

そのようにして季節をまたぎつつあった晩夏、ブレンディポーションコーヒーのことをふと思い出したのはある暑い日にスーパーカップバニラを凝視していた瞬間でした。

「コーヒー原液をバニラアイスにかけたら絶対おいしい」

ということを、思えばわたしは初めてポーションコーヒーを買った日からずっとうっすら考えていたのでした。

それでもなんだかこの夏はバタバタした印象ばかり強く、妖精たちが夏を刺激するナマ足ヘソ出しマーメイドどころか、スーパーカップにブレンディかけることをすら実行に移せぬままに時ばかり過ぎていたのではなかったか。

 

 

今こそその時と思った私は、東京2020オリパラ特別デザインが切なげにほどこされている夏の終わりのスーパーカップバニラを買い求め、何か月も前に買ったポーションコーヒーを静かに注ぎかけたのです。

ミルク色の塊が端からゆっくりとけて秋空に浮かぶ鰯雲のように散り散りになっていくところをデザートスプーンの上で苦みと甘みをバランスしながら食べてゆけば、 熱いエスプレッソにすべてを溶かされる予感に焦らされることがないぶん、イタリアンのアッフォガードより心静かに食べられて、染み入るうまさ。

たっぷりかける苦みがまた市販のアイスにはない大人の味になるねえ、などとつぶやきつつ二つ目を追いコーヒーに及ぶのでありました。

過ぎゆく夏の悔恨のアッフォガート、たいへんおいしい。