青紫でポサポサとした、花だか穂だかよくわからない変わった花を買ったのは、形が猫じゃらしに似ていると思ったからだ。
買って帰ってみると、がっしり太い茎には松のような細い葉がびっしりついていた。
水に浸かると傷んでしまうだろうからと全部取って活ける。
驚いたのはアッと言うまに水が濁ることだ。
朝晩冷たい水に変えているのに、すぐに変色してしまう。
おかげで一緒に水に放してあった、トルコキキョウやらデルフィニウムやら、細い茎と薄い花弁をもつ、いかにも弱そうな花たちがすごい勢いでしおれていってしまう。
葉を摘み取った切り口のあたりを焼いてみたり、氷を足してみたり、色々手を尽くすが、弱い花たちは枯れ果てて瞬く間にグラスの中は青ぽさぽさだけになってしまった。
「君は何か毒でもあるのかね?」
朝晩水を変えて大切にしていた他の花を駆逐してしまったことにまったく怨みを持たないとまでは言えず、
「ちょっと困ったものを買ってしまったな、どおりでいやに安かったもの」
などとずいぶんな考えもよぎる。
部屋に置く花はまた新たに買って違うグラスに活けた。
そうして、青ぽさぽさは玄関に移す。
日の射さない玄関に居てびくともしない、とても丈夫な花だ。
最初は鬼の金棒みたいなシルエットだったものが時間が経つと少しずつシュワシュワが伸びて線香花火のようにもなってきた。
可愛くない訳じゃ、ないんだよな。
誰とも親しめず自分たちだけ残ってしまって寂しいだろうか。
図鑑で探しても、ネットで引いても名前の分からない花、検索ワードは「青 ぽさぽさの夏の花」。
他者と親しまない性格の、君の名前は何だ。