ユヴァル・ノア・ハラリがコロナウイルス流行後の世界に関する論考を発表したというので、あちこちで話題を見かけます。
私も読みましたが、やっぱり面白い人ですね。
ハラリの本が好きで、どれをどこから読んでも面白いなあと思うのは、あんなにデータベースアウトプットマシンとして有能なのに、本人はやたら悲観的なところが、いっそユーモラスな気がするんです。
「この人もうちょっと『こんなに情報操れる俺様無敵』とか思わないもんかな?」
と、ページごとに思わされるのが、ちょっといいんですよね。
コロナ後の世界に関する論考も、相変わらず煽りのない冷静な情報分析なのがかえって、煽ってる人より悲観的に読み取れるあたり
「やっぱりどこか風変わりなユーモアある人ではあるよねえ」
と思ってしまったわけであります(いや深刻な分析ですが)。
そんなハラリが「人間の衛生管理における過去最大の進化の1つが手洗いだ」と言っています。
どこからどういう文献集めてどう読みこんでるのかわかりませんが、前頭葉に猛烈な量のデータベースを詰め込んで「人類のために手を洗おう」と一周まわって普通過ぎることを言っている。
あのハラリまでもが草食動物のような少し疲れた悲し気な目をして手を洗おうと言っているではないか、そう思うとちょっとジーンときました。
例えば、せっけんで手を洗う行為について考えてみよう。これは人間の衛生管理における過去最大の進化の1つだ。この簡単な行動が、毎年数百万人の命を救っている。今でこそ衛生管理に必要な当たり前のことと理解されているが、科学者がせっけんで手を洗う重要性を発見したのは19世紀に入ってからだった。
それまでは、医師や看護師でさえ1つの手術が終わると、手を洗わないまま次の手術に取り掛かっていた。今日、数十億人が毎日、手を洗っている。監視されていて、手を洗わないと処罰されるからではない。その有効性を理解しているからだ。
私がせっけんで手を洗うのは、ウイルスやバクテリアについて聞いたことがあり、これらの小さな有機物が病気を引き起こすことを理解し、そしてせっけんがそれらを除去してくれると知っているからだ。
「手を洗おう」ひとつ言うにも、普段の生きざまというか、個性が観測できるのはこの際なかなか興味深いですね。
木村拓哉も「手を洗おう」って言うだけで生きざまが見えるタイプの人とお見受けします。
こちとら庶民なので「いったん水止めてっ!水止めてっ!」とハラハラするんだけど、医療ドラマ仕込みだとこうなったりするのかしら。
Smile Up ! Project ~Wash Your Hands~ 木村拓哉
ハラリの一番新しい本もめちゃめちゃ面白かったです。
あとがきに至っては「私にできるのは本を書くことだけだ」とか言い出しちゃうあたりが、もう本当にたまらずジーンとくる。元気だして。