2019年のCGリメイク版『ライオン・キング』を観ました。
劇場に観に行く勇気はでなかったけど、公開時から気になっていたんだよ。
超実写版ということで、もうモッフモフです。
子ども時代のシンバを見せつけられたからには猫飼いとしてはちょっとスルーするのが難しいくらいの子猫ちゃんクオリティ。
うちでも猫が片手で持てるサイズだった頃は
「あーふめんやーかばでぃー ちわわーっ」
ってシンバごっこしたものですよ。
この映画は何が恐ろしいって、このクオリティのリアル・ライオンがナショナルジオグラフィックくらい壮大なアフリカの景色の中で、いきなり陽気に歌い出すところですよね。
何を考えているのか。
リアリティの設定がどうなってるのかまったく理解できないということでミュージカル『キャッツ』を見たときくらいの眩暈を覚えたんですが、バツの悪いことに私こういうバットトリップ感、結構好きなんです。
何観てるんだかだんだん分からなくなってくる快楽ってあるのよね。
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あの『ライオン・キング』ですから、話は単純です。
「これが俺の息子、お前らの未来の王だぞっ」
って言って赤ちゃんライオンのお披露目するところから物語ははじまります。
そこに自主的にワラワラと集まってきた草食動物たちがハハーッとひれ伏すという、
抜群に荘厳だけど見ていてそんなに釈然とはしない例の光景ですよ。
そしてシンバの身にいろいろあって話が一周して
ラストシーンはまた同じ場所で、今度は王になったシンバが自分の息子を掲げて
「これが俺の息子、お前らの未来の王だぞっ」
っと言ってまた草食動物がハハーッとひれ伏してサークル・オブ・ライフが継続して良かったね、という美しいシーンです。
美しいけど、まああんまり釈然とはしないですよね。
「ライオンはシマウマを食べるけど、死んだら土に返ってそこから育った草を今度はシマウマが食べるんだからこれがサークル・オブ・ライフで万事オッケー」
というふうにシンバ父子は話し合いますど、そこはシマウマの意見どうなってるのかな、というのは気になります。
だってこの世界、シマウマとライオンで言葉が通じてしまうのですから、通じる以上は誰も聞かないわけにはいかないはず。
しかも劇中で、ライオンって虫だけ食べてても生きていくことができて、ちゃんと一人前の体格に成長するだけの栄養も取れるって証明もしてしまっています。
そうなるとやっぱりシマウマとしては
「あなたがた遠くで虫食べて生きてもらっていいですか?私たちは肉食獣の王とか別にいらないんで」
って言ってくる可能性も低くないと想定されるではないか。
またかなり厳密にオリジナルアニメ版を踏襲したこの作品は、当然シンプルな貴種流離譚でもあります。
ようするに「王位継承者がいる→王国を追われる→試練に合って成長する→正当な王として帰郷する」のはずなんですが、この「試練」のところが、ヒッピーのコミューンみたいな理想郷で歌いながら虫を食べて暮らす、というだけだったりします。
あんまり勉強できなくてちょっとグレかけてるから箔付けのために海外に留学に出してもらったボンボンがそれっぽい学歴ひっさげて帰ってきたみたいにも見えて、こうなってくるともうなんの話だっけ?とならざるをえない。
ボンボンin the ヒッピーコミューン
でもそれは、どうやら作ってるほうもちゃんと意識していて、時代に合わせて修正しようと思いながらもオリジナルの『ライオン・キング』にも忠実でありたい、というジレンマがあちこちに垣間見えました。
その引き裂かれっぷりがむしろ現代的で結構好き。
モッフモフのシンバが大人になっちゃうのは少し残念ではあるけれど全然退屈もしないですし、楽しい映画でした。
人に言うのはなんとなく気恥ずかしいけどね。
私はオリジナル版より面白く見ましたよ。